▲4四副将《ふくしょう》(あるいは、ニッチなんでしょう/なんだよね)
結局、ぶちまけられた飲み物だけ、そのモリ少年に買って来させたミロカと沖島さんは、再び戻されたテーブルの上で端末を展開させると、先ほどの感想戦の続きを始めたのだけれど。17:12。そろそろ夕方かな。でもまだまだ陽は高くて、窓の外は薄明るい。私たちの陣取る2Fの窓寄りの四人掛け席の周りも、人で埋まるようになってきた。
「……」
そのモリ少年はというと、少し離れた窓際のカウンター席にトレイごと移動すると、何かよく分からないけど、設置されたイスとイスの間の何も無いはずの空間に腰を降ろして、何事もなくまた咀嚼し始めた。ええ……。その両隣りに座っていた、連れと思われる女子高校生らしき二人が、突然間に入って来た人影に慄き、速やかに退出していくのを横目で追いながら、私は説明を求める意味でも沖島さんの方を二割くらい白目になりながらも見返る。
「ああやって、普段から身体を鍛えているの。もちろん監視の目があるから、それはきちんとかいくぐっているんだけどね」
沖島さんが、ちらとその方へ目をやりつつ細めつつ、そう説明してくれるものの、ううーん、どうみてもかいくぐれてはいないんじゃないかな……というか周りのヒトの目は気にならないんだねぇ……
「えっと、彼は知り合い……?」
だろうとは思ったけど、そういう風にしか切り出せなかった。私の目の高さと結構平行な位置に、学生服に包まれてぷるぷる震えてるお尻があったりと、割と平常心を保ちづらい状況だったからっていうのもある。
「私、小さい時はこっちに住んでて、モリくんとは家も近所でまあ、幼馴染って感じ」
中盤くらいまで戻された局面をふんふんと検討しながらも、沖島さんは私の問いにさらりと答えてくれた。へえ、でもじゃあこのお店で出くわしたのは偶然なんだ。
「モリくんは部活帰りいつもここに寄るらしいから、いたら会えるかもって」
……なんか、今までのやり取りを総合判断すると、沖島さんはこのモリくんを憎からず想っている風なのですが。ちょっと、その久々味わう、非日常なんだけどあくまで立ち位置は日常寄りという、きわめて安堵しつつその波に乗れる、ほどよい高揚感にきゃあとなりながらも、結構な真横に膝をガクガクいわせながらもハンバーガーを、実際に目にするのは初めてな「両手持ち」にて流し込むようにして食べている本人もいるわけで、次第に声は小さくなる。
「……部活って」
「サッカー。
即答されたけど、「部活」っていったら将棋の研究会だと認識していた私は、ちょっと驚いてしまうものの、尋常じゃない身体の鍛え方とか食べ方はまあ確かにと思わせる何かはあった。あまりサッカーなるものの事は知らない私だけれど、この将棋至上の国でそれ以外のことを大手振ってやれているイコール相当な才能と実力を兼ね備えているんだろうとも思った。
ただ、あの
そんな、ふと思いが至ったフウカの名前と顔画像が、目線の先に置いていた端末の上に突然浮かび出て来たので、ちょっとびっくりしてしまう。ええと……着信。何かこのタイミング……いやな予感しかしないんだけれど。
混沌はカオスに惹かれ合う……その、この世を司る何者かの確固たる意志が込められた時空法則を、再び私たちはいやというほど体験することになるのだ↑け→れ↓ど←。
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