第62話 セリカ
先日、以前に一緒に働いていた後輩くんから連絡が来ました。
関西に転勤したので、仮の名前を「西くん」としておきましょう。
西くんは、その当時、お隣の部に入ってきた新入社員で、同じフロアで働いてました。
いつも遅くまで残っている頑張り屋さん。
私が残業を終えて帰る時に「まだ残るの?」と声をかけると、「コレ、残業じゃなくて、自主練です」と言います。
話を聞くと、タイムカードは6時に押して、調べ物をしてると言うじゃないですか。
自分の知識不足で、残業手当を貰うのは忍びないと思った模様。
それも仕事のうちだし、自主練中に怪我とか、何かが壊れたとかになると色々面倒だから、そんな事しなくていいよ、と諭したりしたのがなんだか懐かしい。
そんな西くんが、京都に転勤する事になったのです。
確か、あと引越しまで2週間もないくらいの日だったでしょうか。
「今日のコーヒー、とまとさんでしょ?」
「なんで分かったの?」
給湯室に行くと、西くんが居ました。
引越し間近だったので、準備は進んだ?とかそんな話をしていたと思います。
すると「あと、車を買って行こうと思ってて。 どこのディーラーがいいんでしょう?」と。
「えっ?! 車って買ってから納車まで1ヵ月近くかかるよ」と私。
「マジですか?」
「マジです」
丁度、その頃私も引越しをする事になり、愛車のセリカを処分しようと思ってました。
「私のセリカで良かったらあげるけど、流石にいらないよね…… 」
中古で購入したものだし、私にとっては丸いオメメの可愛い車だけど、そんなにいいものじゃありません。
「マジですか?」
「マジです」
「いくらで?」
「廃車にしようと思ってたから、お金は要らないの。 その代わりに、名変とかの手続きは自分でやってね。 きっと手数料がいくらかかかるよ?」
「マジっすか!」
「そればっかだねw。 てか、セリカでいいの? 車検は1年近く残ってるけど」
「勿論ですよ! パエリア食いに行った時、乗せてもらったじゃないですか!」
その時は忘れていましたが、郊外のパエリアの美味しいお店に一緒に行った事がありました。
友達と2人で予約していたら、当日、友達がインフルエンザでダメになり、例の如く残業をしていた西くんを誘ったのでした。
そんな訳で、愛車は西くんと共に京都へ旅立ったのです。
それから、彼女が出来たとか、結婚することになったとか、節目節目で連絡をくれていましたが、ここ数年は年賀状のやり取りだけになっていたのです。
そんな中、今回の連絡は「とうとうセリカを手放す事になりました」という報告でした。
もう8年以上も経つのに、まだ乗っていた事の方が驚きです。
話を聞くと、赤ちゃんが出来たので、ワンボックスカーに乗り換えるとの事。
産まれたら、写真送ってね!と、電話を切りました。
なんだか嬉しい!
西くんもパパになるのか。
出産祝いは何がいいかな?
贈り物を考えるのって、とっても気分が上がりますね!
今から、産まれて来るのが楽しみです。
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