第42話 出逢いの話

 私、人の“出逢い”の話を聞くのが、大好きなんです!!


 人との出逢いは勿論、物との出逢いも。


 仲良くなると、つい聞いちゃいます。




 私が入院していた時の事。


 同室になった方が、とても気さくなママさんでした。


 お名前は、便宜上、ヨウコさんにしておきましょう。


 確か、高校生くらいのお子さんがいて、旦那さんが優しそうで。


 でも、旦那さんに対して、いつも「ツン」なんですよね。


「デレ」が無い。


 でも、旦那さんは、いつも穏やかで奥さんに辛く当たられても、ニコニコ。


 不思議な感じ。


 で、例の如く聞いてみました。


「お二人はどうやって出逢ったの?」って。




 お二人は同じ会社の同僚だったんですって。


 旦那さんの会社に、ヨウコさんが入社したのです。


 彼は、朝、髪の毛ボサボサで出勤して来て、職場で歯を磨き、職場に来てから靴下を履き替える……


「もう、イヤー!近寄りたく無い!不潔!」


 それが、彼に対する印象だったとの事。


 それが、ある日、彼が風邪で高熱を出して会社を早引きしたんですね。


 男やもめの独り住まい。


 心配した上司が、ヨウコさんにお見舞いに行くように言います。


 取り敢えず、食べ物を持って行きました。


 次の日も高熱が下がらずお休み。


 また、上司がヨウコさんに言いました。


「机の中見てやれ。急ぎの案件があるといけないから」


「はい」


 上から順に開けました。


 そして、一番下の大きな引き出しを開けた時。


「きゃー!!」


 そこには、履き替えた後の使用済みの靴下がどっさり。


 慌てて締めたそうです。


 その声を聞いた上司が慌ててやって来て、引き出しを開けて、ガックリ。


「ヨウコくん、悪いが今日も見舞い行って様子見て来て。そして、コレ持って行って洗ってやって」


「えー?!やです。やです」


「頼むよー。今度、焼肉馳走するから」


「えー。しょうがないなぁ。絶対ですよ!でも、コレ無理。さわれなーい!課長、紙袋に詰めて下さいよー」


 そうやって、この日も嫌々お見舞いに行ったわけです。


 ご飯作って、お洗濯して、お掃除して……


 元気になった彼は、お礼にヨウコさんを食事に誘います。


 そして、告白。


 30回は断ったって言ってました。


 ホントかな。


「不潔な人を、ここまで普通の人にするの、大変だったんだからー!」って、笑ったヨウコさんは、やっぱり、旦那さんの事が好きなんだなぁ……って思いました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る