美しい雨と、美しい彼女の話

のらうさぎ

序章

雨が、降った。


雨は、世界の色を少し変える、と思う。


天からの恵は、草木の肌を濡らし、道路を歪なドット柄に仕上げ、薄汚れた現実を綺麗さっぱり洗い流してくれる。気が、する。


そんなお恵みの時間が去ると、世界は天に感謝するかのようにきらきらと輝きだす。神も、七色のテープを投げて祝福してくれている。そんな気がしてくる。



僕は、雨が好きだ。


雨そのものが、雨音が、それにより変わる景色が、ぺトリコールが、全てが好きだけれど。でもそれらは、大して理由にならないと思う。


僕が雨を好きな理由はとても不純で。





「ほら、雨!雨だよ!早く帰るよっ」





雨が降ると、こうして幼馴染の女の子が話しかけてくれるからだ。


彼女の名は秋森美雨。

文字通り美しい雨の日に生まれた、雨よりもはるかに美しい人だ。



彼女が笑うと、世界は、雨に包まれる。



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