END THE GAME
江上 ゆい
第1話 あの日から…
「うぉぉぉぉ! おりゃゃゃゃ!」
俺のソードが<デススカル>と頭の上に書かれたモンスターを真っ二つに斬り裂いた。
「ガァー!」
と呻き声を上げて <デススカル>とモンスターの頭の上に表示されている下のHPゲージがあっという間に無くなっりパリンと甲高い音を立てながら弾けて消えた。
その瞬間俺の目の前に半透明のウィンドウが開かれ、ポイントと経験値、そしてドロップアイテムが表示された。そのウィンドウを閉じると、
「おりゃゃゃゃ!」
小学校高学年くらいのヤンチャそうな女の子がサブマシンガン両手に持ち<デススカル>に向けて打ちまくっていた。
「ガァー!」 「ガァー! 」 「ガァー!」
周りから沢山の呻き声と銃声を響かせて次々と
<デススカル>のHPゲージを減らしていた。
決して大きなダメージではないが確実に敵の急所に弾丸を打ち込んでいる確かな技術に俺は感心していた。
しばらくするとパリン!パリン!とあちこちで甲高い音が響き<デススカル>は弾けている。
「ふぅー、打っても打っても切りがないないわね」
そうドヤ顔で言うとサブマシンガンに弾を装填し始めた。
「ありがとな!夏菜がいなかったらこの敵の数は対処しきれなかったと思う」
俺は笑顔で、そう感謝の気持ちを伝えると、夏菜は少し怒鳴り口調で答える。
「そんなに真面目に答えるなよ!こっちが恥ずかしいだろ!」
こう答えた夏菜の顔は夕焼けの様に頬を赤らめていた。
そうしていると、いきなり背後から声が聞こえた。
「ガァー!」
気がつくと<デススカル>がソードを大きく振り上げていた。俺達は反応が遅れてしまいダメージを覚悟した。
その時。
「バシューン」
と言う大きな銃声が鳴り響き、目の前の<デススカル>の頭を撃ち抜いた。《デススカル》のHPゲージが半分を切っているのを確認して俺は、
「フレイムバースト!」
そう呟くとソードが炎を纏い刃が赤く染まる。俺はそのままソードを振り抜いた。パリン!また甲高い音を立てて<デススカル>は弾けて消えた。
ふぅー助かったと思い先程と同じ内容のウィンドウを消すと、優しい透き通った声が聞こえてきた。
「もぉ夏菜!春風君から離れてよ!夏菜には秋人君がいるでしょう!」
怒っているのだろうが全く怒っている様に聞こえない。それどころか、その声に優しく包まれているとさえ感じてしまうくらい優しく透き通った声だった。
「ごめん、ごめん、離れるからおこんないでよ」
先程までドヤ顔で威張っていた人とは思えないくらい低い態度で夏菜が謝た。
「もういいから早く離れてー‼︎」
それを聞いた夏菜は軽くステップを踏み俺から 4、5メートルくらい間合いを取った。
俺はそれを見届けた後、目の前に立ちはだかる大きく禍々しい城を見上げていた。すると背後から大きく元気な声で
「おーい。春風、夏菜待ってくれよ…」
そう言いながら、いかにもチャラそうな金髪の若い男がヘトヘトになりながらフラフラと走って来た。
「どうしたんだよ秋人?先に偵察して来るから待っとけって言っただろ」
「何言ってんだよ、お前ここがどこか分かっていってんのか!魔王の城の目の前なんだぞ!」
いつもの優しい顔が少しこわ張り、いつもより真剣に強く言葉を放った。
「分かってるって。俺だってここまで頑張って来たんだ、こんな所でゲームオーバーなんて嫌だし気をつけてるって」
俺はそう言いながら、もう一度、気を引き締め直した。
「本当か?まぁ分かっているならいいよ!」
と言い、機嫌を取り戻した秋人に夏菜が飛びかかった。
「痛い!痛いよ夏菜。どうしたんだよ急に?」
「なんで春風を心配してるのに、私は心配しないのよ!?」
「ごめん、夏菜強いから大丈夫だと思って!」
これはいかにも夏菜に火を着けそうな言葉をいったな、と思っていると、予想通り夏菜の秋人を叩く手は強くなり、バシン!と言う音も大きくなった。
自業自得だなぁと思い俺は魔王の城を見上げながらこのゲームが始まったあの日を思い出した。
「あの日から2年かぁ…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます