カルテNo.3 どの世界でも生きるには働かなくちゃ

「ねぇ、キャビン。氏名とか住所とか暗証番号なら分かるけど引き下ろす時の身分証明って?」


「あぁ、言ってしまいますと、仮に桃香様が銀行に行きたくても都合が合わず誰かにお願いした場合、その代理人が桃香様だけが身分を証明出来るものを代理人が持ってる時は代理人でも桃香様の口座からお金を引き下ろす事が出来るのです。」


「私だけが持っている物ねぇ。」


「カラカラ。出来たら希少価値のある物が良いかと思われますよ?」


「ん〜……じゃあ、コレにしようかな?」


「カラカラ。コレは懐中時計ですね。」


「うん。接骨院の師匠から餞別にもらった純金製の懐中時計。師匠の元で長年勤めてたから、師匠が特別にくれたのよ。」


「なるほど〜。弟子思いの師匠ですね。コレなら桃香様の引き下ろしの際に代理人の方が来て、この懐中時計を出せば下ろせますね。」


私はボールペンで氏名と生年月日と住所と暗証番号と身分証明になる物を書いて住民票と純金製の懐中時計を添えて受付のお姉さんに渡す。


「はい。では順番にお呼び致しますので椅子に腰を掛けて少々お待ち下さい。」


取り敢えず、少し待つけど朝から凄い人が多いよね。それに結構、融資の話とかちらほら。融資って言えば本当は私も自分の居た世界で接骨院を開業するなら融資を借りて開こうって思ってたんだけどね。


思えばそれって借金になるんだよね。専門学校時代の同級生も開業したけど融資の借金を返すのに必死で満足出来る生活まではまだ遠いって話を聞いたし。


毎日、毎日。売り上げを考えなくちゃイケナイから仕事が終わっても仕事の事を考えちゃうから、まだ修行時代の方が休める時に休めたって言ってたなぁ。


そう考えると私は不本意だけど魔法使いになってしまって、魔法世界に来てしまったけど、クマ吉からの願いとして、自分の接骨院と満足出来る生活が成り立つ様になってるからまだ良いのかな?


「日野桃香さん。」


「はーい。」


銀行の受付のお姉さんに呼ばれたので椅子から立ち上がり受付のお姉さんの元へ足を運ぶ。

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