カルテNo.2 三十路女。接骨院を開くまでの道のり。
「それも大丈夫だ。」
私はメモ用紙に前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)の圧痛の陽性、右の薬指と小指の牽引時痛(けんいんじつう)と軸圧痛(じくあつつう)、腓骨下端部の叩打痛の陰性を書く。
もし、牽引時痛と軸圧痛、叩打痛が陽性の場合は骨折を疑うが、どうやら、その心配はなさそう。ダリウスさんは恐らく右足関節の捻挫であろう。
前距腓靭帯の圧痛と内反時の痛みの陽性と底屈時の痛みは確実に二分靭帯(にぶんじんたい)と呼ばれる靭帯の損傷。
「桃香様。お待たせしました。」
「日野さん。これで大丈夫ですか?」
ちょうどダリウスさんの問診が終わった時にワタル先生とキャビンが戻って来たので私はメモを見ながら確認していくが、1つだけ足りない物がある。
「ワタル先生。氷嚢はありますけど、氷が無いんですけど……」
「それなら僕に任せてください。」
「え?あっはい?」
「僕は医者ですけど精霊使いなので、氷は精霊を使って出したいと思います。」
「では、よろしくお願いします。」
そういえば、ここって魔法世界だったの忘れてたわ。そうか、精霊を使って自然的なものを出したりする感じなのね。
するとワタル先生は魔法陣が描かれた紙を取り出し両手の手の平を合わせて呪文を唱え始める。
「 凍てつき氷の精霊よ、我が失いし魂の傷よ、古き契約に従いて、わが意に従い、凍り付け。その名はフラウ。」
恐らく精霊を呼び出す呪文であろうワタル先生が唱えると手の平に乗るくらいの大きさの白く冷たいクールな小さい女の子が現れるとワタル先生が指で動かすと氷嚢に入るサイズの氷が現れる。
私は氷嚢の袋口を閉じて冷た過ぎないようにダリウスさんの足首に氷嚢を置いてアイシングさせる。触った時に右足と左足で右足に炎症による熱感があったので10分から15分ほど冷やす。
「ダリウスさん。冷た過ぎませんか?」
「おう大丈夫だ。」
「もし、冷た過ぎたら言ってくださいね。」
次はガチムチのパラスメントこと腰がゴーしたゴウさんの問診に取り掛かる。
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