第65話

side一華


何で、なんで、なんで。


あいつが困る、あいつの無様な姿を見たかったのに。情けないどうしようもない姿を見たかったのに。笑われる姿が見たかったのに。


どうして、どうして。何で、あいつはちやほやされるの、持て囃されるの!?


私は自問自答を繰り返す。


そこで、ふと視界にポスターが張られているのが嫌でも目に着く。


表紙にはあいつが去年一番を取った時の写真が貼られたポスターが。今年も出場と出ているので、ミスコンに出るのだろう。


.....このミスコンであいつに勝てば.....


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麗華先輩のおかげで無事に劇を終えられ、文化祭メインイベントと言っても過言ではないミスコンまであと一時間ちょっと。


麗華先輩のクラスの人は、気を使われたのか早々に去って行った。


周りのにやにやした視線や、麗華先輩の友達に冷やかされてもじもじしていた先輩はとっても可愛かったけど。


そんな麗華先輩はというと


「もっと褒めて。裕也君」

「はいはい」


人がいなくなって甘えに遠慮がなくなっていた。


「ごめんね。裕也君に褒めてもらうのがうれしくて」

「僕でいいなら、いくらでも褒めますよ」


ゆっくり頭を撫でる。くすぐったそうに身をよじる先輩もすごくかわいい。


「あの.....」

「やった♪」


次いでだし…


「ほかにしてほしいことってありますか?」

「うーんっとね」

「あの.....」


まぁ、麗華先輩頑張っていたし、僕も何かやってあげたいし


「じゃあ、ぎゅってして?」

「…はい」


優しく麗華先輩を抱く。嬉しそうに胸に顔をうずめる麗華先輩。ふわっと女の子特有の甘い匂いして、男と違って柔らかい肌だ。ずっと抱いていたいくらいに。


「あの!!」

「は、はい!?」

「え!?」


え?


「ミスコンで体育館使うのでよろしいでしょうか」

「は、はい」


後ろを向くとげっそりしている二年生の先輩がいた。


なんかすいません.....。


僕は気恥ずかしさから麗華先輩の手を引き屋上まで来る。


「えへへ。見られちゃったね」

「そうですね.....」


何だか申し訳ないような、恥ずかしいような。うれしいような。何とも言えない気持ちになる。


「なんだか、うれしいな」

「なんでですか」

「裕也君と、こうして文化祭を回ることができているのももちろんだけど、こんなふうに一緒に照れたりしてさ」


そうして、こっちを向きニコッと笑う。


「僕も楽しいですし、なんだかうれしいですよ」

「そっか」


こんな意味もない会話でさえ楽しくなってしまう。


「あ、そろそろ麗華先輩。ミスコンの準備じゃないですか?」

「うん。じゃあ行ってくるね。……その前に」

「はぁ.....どうぞ」


麗華先輩が両手を広げて何か期待したようにこっちを見てくるので、麗華先輩に抱き着く。


「ふわぁ.....落ち着く」

「寝ないでくださいね」

「ふふっ。大丈夫だよ。……ありがと裕也君」

「どういたしまして」


麗華先輩がゆっくり僕から離れて準備に向かう。


僕は少し屋上でゆっくりしてから夏樹のもとに行く。


「なぁ、聞いたか一華先輩もミスコン参加するらしいぞ」

「へぇ、マジか」


.....。

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