彩飾の檻

阿鼻衣ケイスケ

残された静寂

「後ろに見えるのがその現場となった工場跡です」


遠くに見えるブルーシートで覆われた建物を背にし

両手でマイクを握りしめた女性が深刻な面持ちで告げる


上空からは報道のヘリが音をたてながら建物を見下ろす

屋根の剥がれ落ちた部分も多く見られるが内部を覗き見るまでには至らない


そこは市街地から少し離れた普段は人気の無い工場跡地

他にも幾つもの建物らしきものが並ぶがそこまでの道のりは草で覆われている


後ろに見える建物を囲むように多くの警察官や報道関係者が押し寄せ

その一ヵ所だけは最盛期以上の賑わいを見せていた


「...市で起きていた私立天橋(あまばし)女学園連続女子生徒失踪事件

行方不明となっていた三人の内の一人の通報により現場が発覚し

うち二人が無惨にも命を奪われる結果となった今回の事件に地元住民の悲しみの声

が多く寄せられています」


リポーターの女性がそっと視線を向ける先には

セーラー服を着た一人の女学生が献花台に置かれた無数の花束や飲み物の前に屈み

涙を浮かべ静かにお別れを言うように手を合わせている


この暗い光景を見下ろしながら皮肉にも雲一つ無く澄み渡った空が笑う


全てを見ていたこの「青の世界」が...

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