③カルガモ

誤射

ネットの掲示板サイト、そのなかでもジャパリパークに関する情報がまとめられた場所の中に「ワイルドハント」というスレッドがあった。


ワイルドハントとは、野生のフレンズを誘拐する行為を指す。

それをされたフレンズは、強姦、売買などされ大抵は生きて帰ってきた者はいない。


明らかなパークのルール違反でありその取締りも強化された。パトロール強化やフレンズにGPSを付けるなど対策もされたが、予算もかかる為、いたちごっこの状態が続いているのが現状だ。


サバンナ地方にも、ワイルドハントを行いにきた人物がいた。


(正直、気が引けるけど大学の学費を稼ぐ為だ...)


荷物を降ろし、茂みに隠れた。

計画はこうだ。


麻酔で相手を眠らせ、手足を縛り、檻の中に入れる。簡単な仕事だ。


早速双眼鏡で獲物を探した。


「...ん?」


東の空の方向から何か飛んで来る。

真夜中なのでよく見えないが、おそらく鳥のフレンズであることは間違いない。


鳥のフレンズは高値で取引されると聞いたことがある。


しめたと思い、麻酔銃を構えた。

スコープを覗きながら狙いを定める。


因みに自分は、猟師の免許は持っていない。

サバゲーでエアガンを使った程度の経験しかなかった。


鳥ははじめてだが、過去に何回か成功しているので今回も大丈夫だろうと思い、引き金を引いた。


バンッ!


言った通り上手く行った。

鳥のフレンズは地面へ落ちていった。


急いで落下場所へと向かった。





俺は目を疑った。

懐中電灯を照らして確認するとその場所にいたのは鳥のフレンズ、だったが。


「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛....

目がっ....、いだい゛....っぁ....」


眠ってはおらず左目を押さえていた。

手の間からは液体が漏れている。


見た限りではカルガモのフレンズだ。

レアリティは低い。


そんなことよりも、俺は重大なミスを犯してしまっていた。


(やべぇ...)


麻酔銃の針が彼女の目に突き刺さってしまった。このまま放置しては、失明してしまう。

直ぐ様獣医を呼び適切な処置をしなければならない。だが...。


そんなことをするのは、コンビニ強盗に押しいって店員を刃物で切りつけてしまったから救急車を呼ぶのと同じことだ。


つまり、俺がここで彼女を助けるような事をすれば俺が捕まるという話だ。


微かな右目で彼女は俺を見た。


「誰...か...、っ、助けて...」


悲痛な声で訴える。

このまま逃げる手もあったが、彼女が俺の姿を見てしまった以上、俺の特徴を伝えられて逮捕される。


(....仕方ない)


腰から、何かあった時様の警棒を取り出した。


「目がっ...ぁぁ...ぁ...」


麻酔が染みるのか、両目を閉じ苦しんでいる。

懐中電灯を消して、ふらふらとした足取りの彼女を俺は押し倒した。


「きゃっ!えっ」


そして、思いっきり、闇雲に警棒で叩いた。


「痛い痛い痛い痛いッ!!!!」


彼女は騒ぎ出した。

俺は気付かれるのが怖くなったので、

頭蓋骨をかちわる勢いで彼女の頭に集中的に殴打をし続けた。


「あ゛っ゛!!!あ゛いっ゛!!!」


彼女の声は壊れて行った。

俺は力を込めて殴り続けた。


「あっ゛、い゛た......」


何発殴っただろうか。

記憶に全く残らなかった。


彼女は悲鳴をあげなくなった。


「はぁ...はぁ...」


俺は明かりを付けて、状態を確認した。


頬や腕、首筋に赤い腫れ跡やアザがあった。

顔は頭と目と鼻、そして口から血を出しておりその血が顔面を半分赤く覆っていて気持ち悪かった。


無数の羽毛が散らばっていた。


俺は、袖についた羽毛を叩き落とした後、彼女の遺体をどうするか考えた。


(元は...、鴨だよな...)


俺は本来生きてるフレンズをいれるはずだった檻に彼女を入れた。


急いで地域内から出た。

キャンプ可能なエリアに、荷物一式が置いてある。


俺は檻から彼女を出した。

まだフレンズの形を保っていた。


「...よし」


素早く彼女の服を剥ぎ取る。

血の着いたエプロンを外し、首もとのマフラーみたいなやつも取る。


一旦深呼吸をした後、靴、タイツ、そしてズボンだがスカートだかわからないものを外し、最後に茶色のシャツを脱がせた。

全体を通して見ると腰も括れているし、かなり健康そうだ。特に、胸は美しい。

彼女もまさか死んだ後に自分の乳房が晒されるとは思ってもいなかっただろう。


カモについては詳しく知らないが、鴨肉というのがあるので、食えるものだという認識があった。彼女の体を見るだけでも涎が垂れそうになる。


俺は夜が明けぬうちにと、急いで調理を始めた。気が動転していた俺が思いついた遺体処理の方法は、彼女を“食べる”という選択肢だった。


時間が経つにつれ、彼女は魔法が解け翼を切断する頃にはただのカルガモになっていた。


羽を削ぎ、首を切り、そのまま肉にした。

思った他フレンズ化時点での解体に時間を取られてしまい、夜が明けかけたのでしかたなくビニール袋に肉を詰めて車に乗り込んだ。


自分自身の心臓の鼓動は早いままだった。

いくら鴨と言えど、初めて人間を解体したのだから...。


家に戻ったらこの肉で酒のつまみでも作ろう。

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