②タイリクオオカミ
正義感
アイデアを求めてがパークを散歩していた時のことだった。
「た、助けて!!」
「えっ...!?」
それは、突然だった。
突如、タイリクオオカミの元に黒い学生服を来た少年が飛びついてきた。身長は自分よりも低い。
「な、どうしたんだい?」
「怖い人に襲われてるんだ...。
た、助けて...」
少年は息を切らしながら言った。
「こ、怖い人って...」
「ぼ、僕はその、い、いじめられてて...、
修学旅行で来てて、罰ゲームがあって...
やりたくないって言ったら、と、突然、武器を持って...」
たどたどしい言葉で状況を説明した。
「おい!!どこ行きやがった!!」
荒々しい声が聞こえる。
遠くの方から6人ほどの姿が見えた。
「どうしよう...、どうしよう...」
彼の気は完全に動転していた。
あわてふためく彼に、
「ひ、ひとまず落ち着いて!」
彼をなだめてる間にいじめっ子達は、2人に近付いた。
「おい!!」
「ひっ...!」
少年は咄嗟に彼女の後ろに隠れた。
「バカだなぁ、アニマルガールに守ってもらうのか?アハハハハ!情けねえ!!」
後ろの数人も、嘲るように笑った。
「君たち、大勢で1人を追い詰めて怖がらせるなんて酷いじゃないか」
正義感に駆り立てられた彼女は咄嗟に言った。
「ああ?動物のクセに俺らに説教すんの?」
「生意気な態度しやがって」
彼らは彼女を鋭い目で睨みつけた。
「....」
一瞬リーダー風の彼は仲間にアイコンタクトを送った。
「わかった。アイツには手出ししねーよ」
そう言った次の瞬間。
ネクタイを掴まれ、
少年の耳に、ドスッという鈍い音が聞こえた。
「ッ...」
「あっ....」
「は、離せよ...」
2人がタイリクオオカミのる両腕を取り押さえる。
「お前が罰ゲームやるまでコイツが痛い目見るんだからな?」
「や、やめ...」
彼は弱く小さな声しか出せなかった。
「やれ!」
リーダーの声で手の空いていた1人が、
キックボクシングの要領で彼女の腹部目掛けて
「ん゛っ....、ンハァ....」
じんじんとした内側の痛みが伝わるが、
歯を食いしばり、痛みを顔に出さない様に耐える。
蹴った彼はさらにもう1発、もう2発と繰り返した。彼は、下腹部や股の近くなど、急所の辺りを徹底的に狙い、蹴り続けた。
「あぁ...っ....、はぁ....」
それでも彼女は反撃もせず、痛みを堪えた。
自分が本気を出して反撃してしまったら、彼らは怪我、もしくは死んでしまうかもしれない。
パークではフレンズがヒトに対して攻撃してはならないと教えられる。倫理観に従い、彼女は全ての拷問を自分で受け入れていた。
「おいおい、これでもやんのねーの?子宮潰れちゃうよ?」
「...くっ」
少年は声を上げたかったが中々出来なかった。
「わ...、私に...、はぁ...、
か、構わないで...、はぁ...、逃げて...」
彼女にそう言われたが、足も逃げようとは出来なかった。
「まだコイツ庇うの?」
「母性本能?アハハハハ!!」
彼らは、彼女の事を馬鹿にした。
さらに、彼女の頭を地面に押し付け、
背中を何度も何度も踏みつけた。
「ぐっ....ぁ....」
低い声が聞こえた。
それが数分近く続いた。
彼女は首もとを後ろから掴まれ、無理矢理起き上がらせた。
「しかし、コイツのおっぱいでけえなぁ」
目つきの悪い金髪の1人が彼女の服をはだけさせた。
「....」
「ノーブラかよっ!相当変態だな!」
「動物だから下着とかそういう概念無いんだよ」
嘲笑される中、彼女は俯いていた。
「マッサージしてやれば?滅多にないぜ」
「ホラホラ、どうだ?気持ちいいか?」
「お前も触りてえだろ?触ってやったら見逃してやるよ」
リーダー風の彼が言った。
「やめろよっ...!!!」
少年は勇気を振り絞り、声をあげた。
「んあ?」
「彼女を...、は、離せ!!」
「君...」
巻き込んでしまった原因は自分にある。
彼女を助ければ...。
「俺らに勝てる思ってんの?」
「舐められたもんだぜ、なぁ?こっちは6人もいるんだぜ?」
構うものか。僕は、彼女を助けて...。
ふと目を向けると少年が複数人に踏みつけられていた。それを見た瞬間、自分の中に怒りの感情が沸き上がった。
「やめろおぉぉおおおお!!!」
雄叫びを上げながらタイリクオオカミは押さえていた2人を振り払い、少年を取り囲んでいた1人に襲い掛かった。
音に気づいた少年にはその一部始終がスローモーションのように映った。
1人につかみ掛かった彼女は目を光らせていた。
2人に襲いかかった。
だが、彼女の後ろにはもう一人の姿が。
あぶな...。
ゴスッ
鈍い音と共に彼女は倒れた。
僕を必死に、最後まで守ろうとした彼女は。
掟を破ってまで、こんなか弱い少年を守ろうとした一匹の狼は。
僕は、慟哭した。
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