画狂少年マンジ 〜春画王決定戦ジュニア杯〜

第1話

 ——喧騒が都営体育館を包み込む!


 平時は市民がスポーツに熱中するこの場所に、平時ではあり得ない熱狂。あられのない姿の女性が描かれた団扇うちわやTシャツを装備し、老若男女問わず集まった観客は中央のステージを注視する!


『さァ、いよいよ決勝のゴングが鳴る! 迎え撃つは、昨年の優勝者。サイト内でのブックマーク、評価数共に業界内トップ。即売会では熱狂的なファンが巡礼に訪れる、最も神絵師に近い男! 天使に愛された構図、悪魔に嫉妬された配色! ラファエロ・悠だァァァァ〜〜〜!!!』


 金髪碧眼の少年、ラファエロ・悠は、気品あふれる佇まいで観客席にお辞儀をする。その一方で、彼の視線は相対する『もうひとりの決勝進出者』に向かっていた。


『対するは、初出場にして決勝まで勝ち進んでいたダークホース。サイト内ではランキング圏外、その実力未知数! 若き獅子は新たな王になれるのか!? 七曜マンジだァァァァ!!』


 炎のように逆立てた赤い髪に黒い作務衣の少年、七曜マンジは、客席に向けて満面の笑みでピースサインをした。彼は悠の視線に気づくと、闘志の籠った表情を悠に向ける。

「よろしくな、今日は勝ちに行くぜ?」

「芸術に貴賎も上下も無いのですが……。今日は究極の美、という物をお見せしますね?」


 ステージの地下に収納されていた巨大ペンタブがせり上がり、二人は競い合うようにHMDヘッドマウントディスプレイを装着する。

 静かな戦いが、始まろうとしていた。

『レギュレーションは60分・カラー絵の一本勝負! テーマは自由、各々の芸術性が試されます! それでは、始めッ!!』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る