第15話 出撃! Zクラス!!
「Zクラス、全員、準備はいいですね」
その頭に、多数の肯定の声が流れ込んでくる。
「よろしい。それではZクラス、〝部活動〟を始めなさい」
薄闇に覆われる空の下、戦場と化した学院に30近い人影が放たれる。
それは正義の使者か、悪魔の遣いか………
◆
「くそっ! 何なんだ、この霧は!?」
純人教団の兵士が
〝式獣機〟の勢いに乗じて万水嶺学院に侵攻したものの、部隊は夕闇と濃霧に包まれ立ち往生していた。
「あまり離れるなよ。はぐれたら合流できなくなるぞ」
1メートル先も見えない濃霧の中、他の兵士も緊張に顔をこわばらせる。
離散を防ぐため部隊を1か所に固める隊長が、通信機を持った兵士に問う。
「通信は、まだ回復しないのか?」
「ダメです。司令部とも他の部隊とも、つながりません」
「GPSや友軍の認識信号は?」
「そちらもダメです……うわっ!?」
不意に通信兵が霧に引き込まれ消えた。
「お…おい! どうした!?」
他の兵士が呼びかけるも消えた兵士から返事は無い。
乳白色の霧の中、20人近い兵士が不穏な沈黙と緊張に包まれる――その時、
キィーッ
「……今、何か聞こえなかったか……?」
キィーッ キィーッ
「ああ、人の金切り声みたいだが……」
キィーッ キィーッ キィーッ キィーッ キィーッ キィーッ キィーッ
「敵か!? 囲まれてるぞ!!」
四方八方からの金切り声に兵士たちは武器を構える。直後、霧のベールを突き破り黒い全身タイツの男たちが襲いかかってきた。
「な…なんだ、こいつら!?」
「キィーッ!」
兵士たちは応戦するも、敵の鋭い爪に武器を切り裂かれ逃走を余儀なくされる。
「何なんだ……何なんだよ……
濃霧の中、後からの金切り声に追い立てられる兵士たち。やがてボヤく余裕もなくなり、荒い息だけを吐いて走り続ける――と、
「うおっ!?」
全員が大きな穴に落下した。同時に付近の霧が晴れ、周囲の様子が分かる。
「くそっ、罠にはまったか……!」
追い立てられて穴に誘導されたのだ。
それは深さが10メートル、直径は40メートルほどもある巨大な穴だった。
その内側は金色の金属板で覆われているせいか、巨大なナベの中にいるように錯覚しながら上を見ると、穴のフチに全身タイツの男が多数立っている。
「一体、こいつらは……それに、この穴は……!?」
「ぬはははは! こ奴らこそは
兵士たちが不安に顔を曇らせた時、穴のフチに新たな人物が現れた。
「そして! この施設こそは〝
特撮番組の敵幹部のごとく語りしは、10代後半の利発そうな少女。
ウェーブをかけたサテンゴールドの髪を肩まで伸ばし、緋色の学生服を着ている。
場違いな少女の姿に呆然とする兵士たちだったが、自分たちの居場所を思い出し、
「お…おのれ、邪悪な財団に巣食う悪魔の遣いめ! 何があろうと汚らしいヒューマンアニマルなどに我々が屈すると思うなよ!!」
「ふむ、活きが良くて結構なのである。きっと優秀な戦闘員になるのであるな♪」
上から降ってきた少女の声に、穴の底で兵士たちは
先ほど少女は『改造手術で誕生した戦闘員』と言った。
ならば、自分たちも………
「侵入者など抹殺するのが当然なのであるが、この〝化学部〟の慈悲深さに感謝するが良いのである。栄誉ある我らが覇道の尖兵として、生まれ変わらせてやるのであるからな♪」
「感謝で言葉も無いのであるか? 殊勝な心がけなのである♪ 世間には『命だけは助けてくれ』と言うので助命してやったというのに、改造を始めると『頼むから殺してくれ』などと言い出す
あきれ果てて溜め息する少女に、兵士たちは滝のごとく冷や汗を流す。――直後、ちり~んと鈴の音がして、
「真に慈悲深いヨは、脅すのはそれぐらいにしてやれと忠告するっス♪」
茶目っ気たっぷりに笑む少女が、穴から少し離れた所に現れた。
ヒザにとどく銀髪を2本の太い三つ編みにして、緋色の学生服を着ている。
鈴の音は、少女のイヤリングに付いた鈴から鳴ったものだった。
「何の用であるか、〝催眠術研究会〟」
「優秀なるヨは、〝委員長〟に言われて情報を聞き出すために来たっス」
〝化学部〟と名乗った少女が穴のフチから振り返ると、銀髪の少女は
「情報ならば吾輩が引き出してやるのである」
〝化学部〟がメロンソーダのような液体が入った注射器を取り出す。
「
「問題ないのである♪ 下級戦闘員は
穴を見ながら鋭い声で、
「あ奴らに手を下せるのであるか?」
「
〝催眠術研究会〟は自慢げに胸を張ると、穴へと歩きながら三つ編みをほどいた。
ヒザにとどく銀髪がキラキラ輝きつつ広がり、光の衣のように少女を包む。
茶目っ気に満ちた表情も、気高く神秘的なものに変わっていき……
ちり~ん
「おお……あ…あなた様は……!」
〝聖女〟のごとく変貌した少女が穴のフチから姿を見せると、穴の底の兵士たちは感極まってひざまづいた。
「偉大なる
〝聖女〟の神秘的な表情と声に、ひざまづく兵士たちは深く
「我らが純粋人類教団の巫女……神聖なる
さらに感動に全身を震わせつつ、
「御姿を
「……あのボケ親父、私がいなくなってから好き勝手やってるっスね………」
銀髪の少女が神秘的な表情のまま口の中だけでつぶやいた。が、今はそれは
「偉大なる世は、全てを包み隠さず話すことを望みます」
「〝お告げ〟のままに……!」
穴の底の兵士たちは感涙しつつ、自軍の作戦の詳細を話しはじめるのだった。
ちり~ん………
◆
「ひぃぃっ……は…早く後退しろ――はぎゃっ!?」
戦車長の悲鳴と共に、重装甲の戦車が枯れ葉のように軽々と舞い上がった。
やがて戦車は重力にとらわれ落下し、地上で歩兵を巻き込んで爆発する。
そんな光景が、
「風は怒りをもって吹き散らす。無様に地を
爆炎の花が咲きみだれる荒野で、若草色の髪の少女が言った。
顔の左横に短い三つ編みを垂らし、先端に小さな
爆発が起きるたび、サイドベンツのブレザーのすそとミニスカートが優雅にひらめくが、スカートの中は厚手の黒いタイツでガードされていた。
「風は忠勇をもって吹き払う。覇道を
少女が乗馬用のムチを振るうたび、竜巻が起こり戦車を空へ舞い上げる。
同時に緋色の学生服をまとう身を銃弾や砲撃が襲うも、全て風が弾いてしまう。
悠然と荒野を進みつつ
「エ…エンジンが焼きついても構わん! もっと早く走れ! 追いつかれるぞ!!」
純人教団の軍隊は、戦車も歩兵も我先にと逃げまどっていた。
無数の爆発の爆風で、付近を覆っていた霧はすっかり晴れている。
だがクリアになった視界に映るのは、背後にせまる少女の姿をした〝死〟だった。
「くそ……援軍は、どうしたんだ……!?」
逃げる戦車や歩兵たちは、いつしか
「おお……待っていたぞ同胞たちよ!」
兵士たちが希望に顔を輝かせた――直後、
ズガアアアアアアアアアアアアアンッ
雷鳴のような金属音を響かせ、援軍の戦車が高々と宙を舞った。
飛ばされた戦車は夕暮れの空に放物線を描き、逃げまどう戦車の1つの上に落下、周囲の歩兵ともども爆炎に包まれる。
「な…に……?」
呆気にとられる兵士たちの目前で、丘陵の向こう側から次々と戦車が飛んでくる。
背後でも少女が次々と戦車を舞い上げ、前後から飛んでくる戦車の雨に純人教団の軍隊は
「
丘陵の上に、金髪碧眼の少年が現れた。
緋色の学生服が包む長身は、細身に見えて無駄なく鍛えられ、顔立ちも精悍に整っているのだが、ニヤけた口元が
前を開けたブレザーの下のパーカーも、派手な
「Shit!」
だが、飛んできた砲弾を少年は左のジャブで弾くと瞬間移動じみたフットワークで発砲した戦車に迫り、派手な金属音と共に右のアッパーで天高く舞い上げた。そして、それぞれ戦車を〝昇天〟させていた少年と少女が目を合わせ、
「
「風は障害を吹き飛ばす。〝王〟と、〝王〟との間に生まれる我が子のために」
「
少年がピュ~と口笛を吹き、少女がダンッと荒野を踏み鳴らす。
その2人により、ほどなくその区域の純人教団の軍隊は壊滅した……しかし、
「おお、なんという悲劇か……なれど、悲しむなかれ同胞よ……!」
爆炎と黒煙のくすぶる荒野に、上等な法衣を着た男が現れた。
「貴公たちの献身は、必ずや〝
男は
「そう……〝重要災害指定〟なる罪に
荒野に散らばる大量の戦車の残骸が男へ吸い寄せられ、空に浮かぶ身を包んでいき………巨大なウニのごとき、無数の砲身を生やす金属球となった。
「
空に浮かぶ金属球が無数の砲身から発砲を始め、地形を変える勢いで
「風は苦もなく破砕する。
だが少女と少年は難なく砲弾の豪雨をよけ金属球に接近、ムチのひと振りと右のストレートを喰らわせる。
「
夕暮れの空に、ひときわ巨大な爆炎が咲きほこった………
◆
「ヒ……ヒヒ……ヒイイィィィィィ……!!」
乳白色の霧が晴れると、夕日に照らされる
「ヒヒ……ど…どうして……俺は、生きてるんだ……!?」
正確には、胴体から切断された男の頭が転がっていた。
「パ…〝
まわりを見れば芝生のあちこちに、特大の杭が何本も突き刺さっている。
加えて切断された人間の部品……頭や胴や手足も、大量に転がっている。
純人教団の軍服を着た人間の部品が、生きて動きながら転がっている。
「えへへ~わたしは~先祖代々のお医者さんなのれすよ~♪」
そんな地獄絵図の真ん中に、柔らかに笑む少女が1人。
「らから~人も痛くしないれ~
小麦色の肌をした優しそうな少女だ。
緋色の学生服を着て、ヒザに届くミッドナイトブルーの髪を12本の三つ編みにしている。
「ふ…ふざけるな……俺たちを、どうする気だ、悪魔の遣いめ……殺すなら、さっさと殺せ……!」
「らいじょうぶ~殺したりなんかしないのれすよ~♪」
〝重要災害指定〟だったという男(の頭)の震える声に、少女は無邪気な優しい声で、
「え~と~『無傷の状態が望ましいのであるが~断裁されていても戦闘員の予備部品に使えるのである』って~クラスの子が言ってたんれすよ~。むやみに人を殺さないなんて~あの子も優しいれすよね~♪」
慈愛に満ちる少女の笑顔に、男の頭は血の気を失う……その時、
「そんなだから~、クラスで〝
また1人、芝生に緋色の学生服の少女が現れた
陽気な笑みを浮かべる、やはり小麦色の肌をした少女だ。
「こうゆう時は~、トドメを刺してあげるのがホントの優しさなんだよだよ~♪」
ヒザにとどく
「そうなんれすか〝心霊学研究会〟~?」
「そうなんだよだよ〝料理部〟~♪ だからだから~……」
小首をかしげる〝料理部〟に〝心霊学研究会〟は陽気な笑みを輝かせ、
「死を笑って死に親しむ~ステキな
腕時計から、キィンッと澄んだ音を響かせた――刹那、芝生から無数の腕が生え出し一帯に散らばる頭や胴や手足をつかむ。
「ヒ…ヒィィィィィィィィッ!?」
地中から伸びる腕は氷のように冷たく、乾いた肌も青白かったり赤黒かったり黄ばんでいたりと不気味に変色している。どう見ても死人の……死体の腕だった。
「ハヒッ……ヒッ……な…なんだ、これはぁ……!?」
〝重要災害指定〟だった男の頭にも複数の腕が絡みつき、不衛生に伸びた爪を顔に突き刺して地中に引きずり込んでいく。
まわりでは他の人間の部品も、次々と地中に引きずり込まれていっている。
「ぐふっ……こ…こんな、バカなことぉ……!」
頭の半分が大地に埋まり、口の中に土が入ってくる。
さらに地中に沈むと、目にも土がかかり視界を閉ざしていく。
「ひがぁぁ……い…いやだぁ……こんな、死にかたぁ……誰か、たすけ……!」
かつて凶悪事件を多発させた男が、かつてない恐怖に魂をすり潰されていく。
そして直感してしまう。
このまま地中に引き込まれれば、二度と地上には……生者の世界には戻れないと。
「お…おたすけを……偉大なる世よ……大司教さま……詠姫さまああああああ!!」
男は半狂乱で祈る………が、むなしく地中に沈んでしまう。
最後の一瞬、瞳が土に埋まる寸前に見えたのは――それぞれ柔らかな笑みと陽気な笑みをほころばせる、2人の小麦色の少女だった。
「ふぐぅ………」
芝生に転がっていた人間の部品が、残らず地中に消えた。
だが大地にはヒビひとつなく、芝生にも一切の乱れはない。
かろうじて残っている特大の杭だけが、地中に消えた者たちの名残りだった。
「キャハハ~、それじゃ次に行くんだよだよ~♪」
消えた者たちの行き先が、単なる土の中なのか、地獄や冥府と呼ばれる異界なのか、それは術をかけた者と、かけられた者にしか分からぬことである。
「わたしたちの〝
太陽が沈んでいく中、付近が再び乳白色の霧に包まれていく。
そして2人の少女も、霧に包まれ消えていくのだった………
◆
「……ふむ、〝部活動〟は順調のようですね」
暗い室内で目を閉じたまま、烏羽色の髪の少女が言った。
「でも、純人教団も精鋭を送ってきたようですね。Zクラスの生徒をよけて、校舎にたどりついた部隊も――」
ドバンッ
不意に扉が押し破られ、部屋に武装した兵士たちが乱入してくる。
室外の光もさし込み、壁に並ぶ棚と、そこに収められた多彩な生地や毛糸、ミシンや編み針などの手芸用品が見えた。
「ようこそ。手芸部の部室へ」
しかし平然とした少女の声と共に、天井から黒い糸が伸びて兵士たちを縛りあげ、一瞬で黒い
「うまく、この部屋に誘導してくれたようですね」
烏羽色の髪の少女が目を開け、部屋の一角を見やる。
カーテンの引かれた窓のそばに、緋色の学生服の少女が立っていた。
押し破られた入り口の外の廊下と、学院中に満ちる霧と同じ乳白色の髪をヒザまで伸ばす、表情の乏しい少女だ。
「しかし、他の学部の校舎にたどり着いた部隊が、他にもあるようですね」
【わたしが いく?】
眉をひそめる烏羽色の髪の少女に、乳白色の髪の少女が手帳サイズの液晶タブレットに表示した文字を見せた。
「いえ、別の者を行かせます。少し気になることがあるので」
横に振られる少女の頭には、天井から垂れる黒い糸が何本もつながれていた。
天井一面に広がる、黒い糸で作られた
◆
「泣くんじゃねえガキども!!」
おびえる子供たちに、武装した兵士が怒鳴った。
広い建物の中に100人を超える幼児が集められ、兵士たちに囲まれている。
「油断するなよ! ガキでもヒューマンアニマルなんだからな!!」
純人教団の部隊が、学院の幼稚部にある屋内運動場に生徒を集め占領していた。
しかし部隊の1人は、運動場の中央へ向くと焦った声で、
「早くそいつを起動させろ! さっさと撤退しないと俺たちもヤバイぞ!!」
同じく学院に侵攻した他の部隊とは、一切の連絡がつかない。
冷や汗する兵士は、運動場の中央に設置された金属製の円柱をにらみつつ、
「いや、まだだ……そのプロジリウム爆弾で、この悪魔の
兵士たちの瞳が狂気に燃えあがり、幼児たちは瞳を潤ませ震えあがる……が、
「……え?」
幼児の1人が、小さな人形を見つけて目をみはった。
トコトコとひとりでに歩いてきたそれは、赤いワンピースを着た可愛らしい女の子の人形……さらに、
「……ん? お…おい、なんだこの人形は!?」
兵士たちが気づいた時には、女の子をはじめ花や動物などの多数の人形が輪になって幼児たちを囲んでいた。
「こ…これもヒューマンアニマルの
幼児たちへ銃弾が放たれる。が、幼児たちを囲む人形が見えない壁を作ったように銃弾は空中で弾かれた。――直後、
「お昼寝の時間なのサ子供タチッ!!」
張りのある声がして、乳白色の
「ハハッ! ここからは良い子は見れないR指定の舞台なのサッ!!」
声のした方を兵士たちが見ると、1人の中性的な美形が立っていた。
顔の両わきの部分を伸ばす髪は、右半分が白、左半分が黒のツートンカラー。
閉じた子供用の傘を右手に、万水嶺学院が高等部の男子の制服――緋色のブレザーにグレーのスラックスを着ている……が、何か違和感を感じてしまう。
「さあ子供たちを泣かせた悪漢ドモッ! ボクが成敗してやるのサッ!!」
いちいち動作が派手で芝居がかった美形が、傘をステッキのように構えた。そして軽快なステップでダンスを始めると、兵士たちも同じダンスを始めてしまう。
「な…なんだ、これは!?」
勝手に動く自分の体に戸惑う兵士たち。
その間にも美形のダンスはキレとスピードを増していき――ブレザーの前を開けた胸元で、メロンのように大きな2つのふくらみが、フリル付きのドレスシャツを突き破らんとブルンブルンと跳ね回る。
違和感の正体……少年の格好をした美形は、ボーイッシュな美少女だった。
「イッツ・ショータイムなのサッ!!」
少女のダンスが、常人は目で追うことも出来ないレベルに突入する――結果、
「ぐはっ!!」
同じキレとスピードで踊るフラッターの兵士たちは、全身の血管が破裂し、
「ぎひいいいっ!!」
筋肉は断裂、骨も砕け、
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああっ!!」
すべての神経が破壊された。
「これにてカーテンコールなのサッ!!」
最後に大きくターンして、ひときわ大きく胸を揺らし、芝居がかったポーズを決める少女。
ダンスの開始から1分たらず、地球トップクラスのエヴォリューターと同じに動いた兵士は全員、巨大なミキサーで
「ふん、東の本家の
不意に高圧的な声が聞こえた。
見ると運動場の入口に、全身から強烈な重圧を立ちのぼらせ、腰に日本刀をおびた8人の兵士がいた。
「だがその程度の曲芸など、我らの前では
「ハハッ! カン違いはいけないのサッ!!」
「オマエたちの相手はボクじゃないのサッ! 出番なのサ〝クズ参謀〟ッ!!」
「〝
訂正する声と共に、新たな緋色の学生服の少女が現れて兵士たちを見る。
「〝
それは
「〝純人教団〟の
腰にとどく
「ほんなら駄犬に、最後の
〝陶芸部〟と名乗った少女は、1本の筆を手にはんなりと笑む。と、兵士たちが少女に鋭く斬りかかるが、少女は舞うように多数の
「〝委員長〟に聞いて来たんどすが、なかなかの
ひとしきり刀さばきを見て、兵士たちから離れると、
「うちの知っとる太刀筋よりは、えろう
「……もしや〝
視線を険しくした兵士の声に、少女は一瞬、感心したように目を見開いてから、
「〝八重垣〟のは娘だけやのうて、息子もおるんどすえ~♪」
「はっ、あの
「〝里〟でも、そないな扱いなんどすえ? あれが気を
顔を曇らせ、かぶりを振る少女……だが、すぐにはんなりした笑みを戻し、
「ま、詳しい話は、あとでゆ~っくり聞かせてもらうどすえ~♪」
「
刀を持った兵士たちが一斉に倒れた。
「さすが精鋭部隊、思うたより時間がかかったどすえ~♪」
兵士たちの刀に書かれた線がひとりでに、刀をにぎる手まで伸びていた。
「ば…ばかな……刀に、
「ふふ、縁を切ったとは言え、うちかて〝
「……おのれえ っ!!」
鼈甲の髪留めをペロリとなめた少女へ、兵士が最後の力で刀を投げた。が、少女はそれを簡単によけてしまう。――しかし、
ピ―――ッ
電子音が聞こえ、〝陶芸部〟と〝人形劇同好会〟が音のした方を見る。
投げられた刀にスイッチを押されたプロジリウム爆弾が、起動を始めていた。
「「あ」」
「く…くく……これで、貴様らも終わりだ……大層な、
マヌケ声を上げた少女たちに
爆弾表面のモニターには『緊急爆発』の文字と、1分を切ったカウントダウンが。
「やっぱりオマエは〝クズ参謀〟なのサッ! どうするのサ、エセ京都弁ッ!!」
「エセやなんて失礼どすなあ~。うちは京都の方で生まれた~、立派なネイティブ・スピーカーどすえ~♪」
「
少女たちが言い合う間に、カウントダウンは30秒を切ってしまう――が、
「何のために、あんさんをここに寄越したと思っとるんどすえ~。ほ~れ早う爆弾を止めんと~、そこの子らが『睡眠』から『永眠』に入ってまうどすえ~♪」
「クッ! コトが終わったら〝親睦会〟で決着をつけてやるのサッ!!」
〝陶芸部〟が邪気なくはんなり笑み、〝人形劇同好会〟は悔しそうに爆弾のそばへ行くと持っていた傘を大げさな動作で開き、
「この程度のオモチャ
クルクルと傘を回し、表面の渦巻き模様を回転して広がるように動かす……と、その渦巻き模様が転写されるように、爆弾の表面に
パチンッ
男装少女がキザな仕草で指を鳴らすと、爆弾に浮かんだ渦巻き状の紋様の一部が消え、爆弾はあっさり機能を停止してしまった。
「オーケーこれでまた子供たちに名作エロゲ―の人形劇を見せてやれるのサッ!!」
「……幼稚園児や小学生に、どないな劇を見せとるんどすえ?」
「エロゲ―こそは人生なのサッ! 子供たちにも毎回大好評なのサッ! そしてッ! いずれ〝王〟との〝愛の結晶〟に劇を見せるのがボクの夢なのサッ!!」
引き気味な〝陶芸部〟に男装少女が胸を張って宣言する。と、豊か過ぎる胸が派手に揺れドレスシャツの胸元のボタンが弾け飛んだ。
「その夢かて、若様の御心次第どすけどなあ~♪」
「問題ないのサッ! 我らが〝王〟が巨乳好きのミスター
Zクラス最大のバストを誇る少女がふんぞり返る。と、ボタンが弾け大きく開いたドレスシャツのえり元から、深過ぎる谷間とスケスケの紫のブラがかいま見えた。
「その〝最胸〟かて、若様の姉君には及ばんのどすえ~♪ そもそも順序が逆どすな~。若様が巨乳の
少女たちの脳裏に、あらゆる点で圧倒的な白金色の髪の少女が浮かぶ――が、
「それも問題ないのサッ! 質より量の人海戦術バンザイなのサッ!!」
「その戦術で我らが〝計画〟を成功させるんどすなあ~♪」
少女たちは清々しく笑みつつ、
「手始めに~、
次なる戦場へ、はりきって向かっていくのだった………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます