まとめ 2 青い石


「何これ、キラキラして綺麗だわ」

「コンビニでコーヒー買ったらくれた、オマケだよ」


 ドリンクホルダーに置かれていた、安っぽい青色のプラスチックの、ストラップだった。


「平八郎さん、これ、もらっていい?」

「やるよ、そんなもん」

「ヤッター! この青い石、きっとラピスラズリの破片よ! 心身の邪気を退け、正しい道へと導いてくれるのよ!」


 彼女は喜悦の声を上げ、少女のような無垢な表情で、そのストラップを眺めていた。その姿はまるで「キラキラのビー玉を宝石だと信じて、宝箱にしまって、ご機嫌に眺めて微笑む」そんな小さな少女のように見えた。


 オレのはその時、 心臓をそっと撫でられたかのように、ハアッと気づいた。


「ただのビー玉でも、宝石だと信じている」


 その少女にとって、それは本当にのだ。これこそがまさに、スピリチュアル的な視点ではないのか。

 

 西のビルの稜線から白い光が溢れて、まだ薄暗い朝の空に、光を灯した。

 日の出。

 その光景が何故か、いつもより神々しく感じた。


 スピリチュアルとは『古代の人類が、ただの物に対して、共通の意味、観念、予見、などの共同幻想を抱き、信じて、幸福を求めようとした』

 

 ――厳しい生存競争のなか、人類が培ってきた叡智なのではないだろうか。


 朝の光を浴びた、助手席の彼女の横顔は美しかった。クリーム色のハット帽をかぶり、ロングスカートのその姿に、オレは彼女と、初めて出会った日のことを思い出した。





つづく






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