月明かりで楽しんで、酔いしれたい

水氷 音

第1話 月の光

冒頭部分に手をかける。

思わず目をつぶり、流に身をまかせる。



まさに"月の光"。

綺麗に流れていく旋律が心地よい、

なんて、綺麗な和音だろう、、


「あっ、、、」

思わず手がとまった。


間違えてしまった、これで三度目だ。

そんなことを思いながら椅子から立ち上がり、

ちょっぴり乱暴な心持ちで冷蔵庫をあける。


「ん、ん~んー。」


今弾いていた曲をハミングしながらお茶を注ぐ。



もう一度弾こうか、

いや、別のものを弾こうか。


たった一瞬の葛藤を終えて、静かに、ピアノ椅子に落ち着く。


なんて心安らかなんだろうか。

なんて心地よいのだろうか。


気分転換で他のものを、と思ったが、

鍵盤に手をかけ、もう一度、と思う。


「んっ、、」

(よし! 上手くいった!!)


と内心で喜びながらも、

ふふっ、と口にだしてしまった。


滑らかに旋律が繋がっていく。


楽しい、もっと味わいたい。

指で、、心で、、全身で、もっと。




溢れてくる想いにいっぱいいっぱい曲をのせていると、ふと、外を観たくなった。


朧雲が掛かりながらも輝く月。

まさにその景色、この曲に、

とても魅せられた。



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