旅立った梟と白鳥
雪虫
夜明け
昔々、ある森に1羽のフクロウが住んでいました。体は少し小さく、様々な色が複雑に混ざった羽毛を持つフクロウです。
仲間と群れることは好まず、けれど困った時には手助けしてもらいながら、ひっそりと夜の森を生きていました。
そんなある日、フクロウは朝ふと目が覚めてしまいました。すぐ二度寝を試みますが、珍しく目が冴えてしまってなかなか眠れません。
(いつもならすぐ寝られるのに)
そう思いつつ不満げに一鳴きしますが、仲間達は皆夢の中で声に気がつく素振りを見せません。
1羽で起きているのは暇で仕方なく、とりあえず眠くなるまで少し森の中で散歩をすることにしました。
朝の森を飛んでいると、普段なかなか起きてる時間には出会わない動物達も見かけます。そのことがこのフクロウには大層面白く感じられ、気がつけば森を見て回るのに夢中になっていました。
飛び始めて暫くすると、フクロウは森の奥にある大きな湖へとやってきました。普段なかなか寄らない湖は、フクロウには少し眩しすぎるくらいキラキラと輝いていました。
湖面の輝きに少し圧倒されながらも景色を楽しんでいると、ふと、フクロウは湖の中心にいる1羽の鳥に目を奪われました。
(あれは何だろう?見たことない羽だ。白くてフワフワしてる…綺麗だなぁ…)
手頃な枝に一旦掴まって、少しの間その見知らぬ鳥をうっとりと眺めていました。
フクロウが目を奪われているのは、とても綺麗な白鳥です。
白鳥は夜行性ではないので、今までフクロウは白鳥という鳥を見たことが無かったのです。
じっとフクロウが見つめていると、やがて白鳥が目を覚まし顔を上げました。少しの間ぼーっとしていましたが、フクロウからの熱烈な視線に気がつくと、ゆっくりとそちらを振り返りました。
似たようなフクロウに囲まれて生きてきたフクロウは、白鳥と目が合うとドギマギして体を固くしてしまいました。白鳥のように綺麗な鳥と対面した経験が全く無かったので、これだけですっかり緊張してしまっているのです。
「そんなに縮こまらないでくださいな。何も食いやしませんよ」
そんなフクロウの様子に気がついたのか、白鳥がそう優しく声をかけました。
これが、2羽の初めての出会いでした。
旅立った梟と白鳥 雪虫 @snow1129
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