貴方は英雄、貴方は供物

寝ていると声をかけられた

「――――」

とりあえず、助けてくれ、こちらに来てくれ

そんな言葉だったと思う

私は断った。しかし起きてしまったのだからと、

起床の為に、体を起こさなければいけない程の携帯電話を手に取る

『――:――』

これも覚えていない。それよりも眠気が勝った

そうして眠りにつこうとした時、

寝ている時に声をかけられるなんてありえない、夢かと思い

「目が覚めた」

夢の中で起き、眠りにつき、夢かな、と思い、起きる、手元に携帯電話はあった。やっぱり夢だと思い眠りにつく、しかしおかしい、やっぱり起きよう、目が覚めた

手元に携帯電話はなかった。定位置に鎮座し、何も表示されていない

明晰夢というものがあるのは知っている

しかしこれは違う。操れない。強制的に見せられる

ああ、また眠い。引きずり込まれる

二度目。「――――」貴方でないとダメなんですよお、と女性の声だった

上と同じことをした。同じ結果だった

三度目。「――――」そろそろ、いいんじゃないんですかね、と女性の声だった

心が疲れ果てた私は、意識を彼女の下へ送るイメージをすると

川の上、正しくは船の上にいた。隣には彼女がいる

話を聞くと、今、この世界は四つの国に分かれ戦争をしているので止めてほしい、と

なんという三文小説だろうと思いながら手元にある菓子を食べた

味がしない

はて、と思っていると女性はにこやかに「ああ、それ子供で出来ているのです」と言った

よく見れば船も子供みたいのを捻じ曲げて出来ていた。菓子を見て絶句する。

帰りたいと願うと、あっさりと現実世界に戻ってきた

滝のような汗、服も湿り、酷い有様だった。

携帯電話の位置を確認してから起き上がり、服を脱いで洗濯籠へ放り投げた

水で濡らしたタオルで体全体を拭き、新しい服を出してトイレに行った後、大量の水を飲んで

再度寝た。馬鹿みたいだけれども、すぐに忘れたくて寝た。

そして次の夢で、私は雛段の一番上、赤い絨毯、煌びやかな場所、下座で喜ぶ人々、手元にある紙。紙には私の名前、現在の年齢、その他、特徴もろもろ日本語じゃない文字の羅列があるが、私には読める。

喜ぶ人々の中に二人の黒の冠に白の服、狩衣だろうか。歓声の中、雛祭りのようだと思った。

上座にいる私、両脇に灯篭、長い段には果物や食べ物が一杯に飾られている。

真っ赤な絨毯、恐怖。

やっと呼べた、やっと呼べた、やっと呼べた

そう人々が言っているのだ。

流石に夢だと分かり、念じればベッドの上で安心する

ぐったりとしていた。こんな連続で意味不明な、心を捻じ曲げる様な夢を見るとは

起き上がり、ベッドに腰掛けながら息を整え、やっと起きよう、と思った朝である。

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