ぽにーてーるとしゅしゅ

@rairahura

第1話

「ライラちゃん」

ホヘがちょいちょいと手招きをする あれはろくでもないことをしたいときの合図だ

望むところじゃねーか


食堂の端っこにお菓子を持ち寄って作戦会議をする

「今回は誰にしようか」

「リオンきゅん!」

「声がでけーよ気づかれるだろうが やけに早いけどなんか思いついた?」

(コクリ)

「おー 言ってみ」

「リオン君の髪紐」

「あー毎日結ってんな あれ手間じゃねーのかね」

「これ」


と ホヘが取り出したのは子供向けの店で売ってるような完璧に女の子向けの ピンク色の なんだこれ


「シュシュ」

「シュシュっていうのか 髪を結うのに使うんだな?」

(コクリ)

「ハート形のでかいキラキラしてる石までついてやけに可愛らしいな これを?」

(サッサッ)

「あ 交換すんのね」

(コクコク)


このでかいハートは目立つな これを付けたリオンを想像してみる これは面白いぞ やるしかない


「でもどうやって?寝てる間に侵入したって気づかれるだろ」

「ホヘの出番!」

「ほう」

「ホヘが一緒に寝たいと言う」 

「なるほどな それで標的自ら危険因子を招き入れると それであたしは?」

(キュッ)

「外で待ってりゃいいんだな?それでホヘが合図をすると?」

(コクリ)

「ライラちゃんに大きい音出してもらう」

「大きい音かー まあなんか考えとくよ」

「リオンきゅんびっくりして外出る」

「まあ出るだろうな あたしが今思いついたことをすれば間違いなく」

「その隙にホヘが」

(ニヤリ)

「でもそれならリオンは髪結わないだけじゃねーのか?」

(...??)

「運任せかよ 一番大事なところじゃねーか それでいつ決行する?」

「善は急げ! 今日だ!」

「何が善だか よしきた」


たまたまそこにいたエリーは「また馬鹿なことを」って顔してた まあそんなに危ないことするわけでもないし エリー本人に影響がなければリオンに言うこともないだろう たぶん どうだろう


それで早いもんで次の日の早朝 まだ鳥も鳴かない時間 仕込みを終えてリオンの部屋の窓が見えるところに待機する

ホヘだ 窓を開けてちらっとこっちを見てから伸びをする 作戦決行の合図だ


この間紅蓮祭で見た「花火」 派手で良かったから自分でも試してみたかったんだ

さあさご覧あれ(誰も見てないけど) 花火職人ライラが(花火職人じゃないけど)今宵(宵じゃないけど)咲かせますはひとときの炎の花

小声で嘯きながら導火線に火をつける


耳をつんざく爆発音が静かな朝の街に鳴り響いた


大成功 リオンは慌てた様子で「髪も結わずに」窓から飛び降りてきた あぶねーな


「何が起こったんだい?!」

「おはようリオン わりーな 手元がくるって持ってる火薬を爆発させちまった」

「おはようライラ そうなんだ 驚いたよ 怪我はなかったかい?」

「ああ この通りぴんぴんしてるよ 周りに人もいなかったし怪我した奴はいないんじゃないかな?たぶん」

「そうだといいね 今回はライラの怪我がなくて良かったけど 危ないから気をつけるんだよ?」

「ああそうだな 「事故」には気をつけねーと ...あーところで起こしちまったみたいだな 悪かった」

「いや 今ちょうど起きたところなんだ だから大丈夫だよ」


って感じでなんとかリオンが部屋に戻らないように話を引き延ばす

今頃ホヘが頑張ってるんだろうけど早くしてくれ こういうの苦手なんだ


ちょっとしてからホヘがハウスから出てきた 成し遂げた顔をしている 成功したみたいだけどそんな顔してるとばれるぞ


「おはよう!すごい音!」

「うん ライラが事故で火薬を爆発させてしまったみたいなんだ」

(!!!!)

「ホヘも起こしちまったか わりーな」

(フルフル)

「そっか 起きてたならならまあ良かった じゃあ二人とも あたしは片づけしないといけねーから」

「リオンきゅん!」

(クイクイ)

「ああ髪かい? 驚いてすぐ出てきたからね 髪を結う時間がなかったんだ」

(フリフリ)

「そうだね そろそろ朝食の時間だし準備をしないと じゃあライラ 僕たちは戻るね」

「おー また朝飯の時に」


と リオンとホヘはハウスに戻っていった ホヘが出てくるのが遅かったのに不信感は抱かなかったようだ よかったー


で 朝飯 今日はなんだろうなーと白々しく呟きながら食堂に向かう

席について見回すとそれなりに今日は人がいる さて

「おはよう!」

ホヘ が 来た 明らかに笑いをこらえてる で ちょっと隣に目をやると

あの可愛らしいしゅしゅ?を付けたリオンが苦々しい顔つきで立っている

真っ先に笑うとばれるかな いやでもあれは だってめちゃくちゃハートの石が目立ってる なんか光りだした! 無理 我慢できない

あたしが噴き出すとホヘも限界だったのか笑い出した それでみんなリオンに気づいて




当然めちゃくちゃ怒られた 爆発も事故じゃないって普通にエリーにばらされたし というかそもそもあんなことするのあたしたちくらいだからな でも説教されてる間もあたしたちは髪紐の在りかを吐かなかったからリオンは仕方なくあの可愛いピンク色のシュシュをつけてて それを見てどうしても笑っちまって本当に大変だった しばらく腹と顔の筋肉が痛かったな


その時のことを思い出しながら罰として言い渡された庭の草刈りをホヘとやってる 腰がいてー

そしたらリオンが通りかかった いつもの髪紐に戻ってる

「なんだ 似合ってたのに」

「もう一週間草刈りをしたいかい?」

「冗談でございますよマスター様 よく見つけたな」

「ホヘトとライラの表情は僕でもわかるくらいに読みやすいからね」

「最初気づかなかったのに?」

「音に驚いていたせいかな」

「次までにポーカーフェイスを身につけないといけねーな」

「はははそうなんだね そんなに庭の草刈りが好きだなんて思いもしなかったよ」

「リオンきゅん!」

(パタパタ)

「ホヘトが何も言ってなくてもライラが余計なことを言ったからね 連帯責任だよ」

「ライラちゃん!」

(プンスコ!)

「発案者はおまえだろーが まあしばらくは大人しくしますわよ」

「ここはもうやらないと言ってほしいところなんだけど 今回はこれで許すけど次はもっと怒るからね?」

「へーい」

「はーい!」


まあそんなこんなで今回は許されたあたしたちだけどそんなもんで止める訳もなく また(あたしたちにとっては)面白い作戦を実行してリオンに怒られたのは別の話

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