男子校に女子高生っ!
抹茶ネコ
第1章 その転入は、天地と常識を覆す
プロローグ
───その日は、なんの変哲もない一日だった。ただ起床して、ただ朝食を食べて、ただ歯を磨いて、ただ顔を洗って、ただ身支度を整えて、ただ登校しただけの……本当にありふれた一日だった。学校に到着し、二年生の教室を目指し階段を昇る。そうして辿り着いた教室に入り、もはや見慣れた光景を一瞥してから自分の席に着いていた。
ぼんやりしていたらいつの間にかチャイムが鳴り響き、全員が座り、朝のホームルームが始まっていた。担任の小話を右から左へと聞き流して、内容なんて頭には入ってこなかった。気づけば一時間目の支度を始めていて、そうして気づけば授業が始まっていた。午前の授業は長く感じたが、ぼーっとしていたら終わりを迎えていたため、そのまま購買で買ってきたパンを机に広げ、友達と席を繋げ合い談笑しながら食事を始める。
そうこうして昼休みが終わるとさっそく午後の授業が始まった。適当にチャイムが鳴るのを待っていたら終わり、掃除をして帰りのホームルームへ。
───あぁ、今日も退屈で変哲のない一日だったと心の中で吐き捨てると、そのまま鞄を手にして帰宅しようとする。そんなときだった。
「一緒に帰ろうぜ!」
バンと肩を叩かれ振り向くと、上機嫌そうな藤枝の姿があった。こいつとは中学時代からの付き合いで、いまでもこうして一緒に帰宅している。
「なんだよ藤枝、ずいぶんと嬉しそうだな」
「……はぁ?お前な、そりゃそうだろ。これでいつも通りのお前の方が異常だっての」
「どういう意味だよ」
「そのまんま。てか、お前だけは朝からいつも通りだったよな?なんでかなぁ、このドライ男は」
「ドライもなにも……なんかあるのか?」
なおも疑問を突きつけていると、次第に藤枝の顔から無邪気な笑顔が消えていた。そうして俺を冷えた目で見ると、「そうかそうか」と蔑み始める。
「お前、そっち系だったんだな」
「あ?」
「いいよいいよ、個性だもんな。でも悪い、俺はむしろこっち派なんでね」
「意味がわからない」
しかし、言われてみればそうだ。たしかに今日の朝のホームルームが終わってから、やけにクラスメイト達の様子がおかしかった。それも悪い意味ではなく、なんというか……待ちわびた期待を一身に受けたような、そんな、藤枝のような上機嫌だった。しかし、俺にとっては謎にしか過ぎない。
「あーあ、明日が待ち遠しいぜ!早く今日が終わればいいなー!」
子どものようにはしゃぐ藤枝を横目に、俺だけが何かの流れに取り残された気分にさせられる。もどかしさが残るが、俺の中の疑念は、やがて明日の朝、見事に回収されることになる。
「───は、初めまして。桐崎
───それは一瞬、なにかの聞き間違いかと思った。いや、見間違いですらあったのかもしれない。この状況を説明できるとしたら、それは俺の頭がついにおかしくなったのか、もしくは───、
「───男子校に女子高生だとぉぉぉっ!?」
───そういうことになったかの、どちらかなのである。
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