お前は美味しいのか?-赤眼の魔女-
さいとう みさき
第1話プロローグ
「ん”んーっ!! んん”ーっ!!!!」
猿ぐつわをされ両手両足を拘束された裸の少女が横たわっている。
彼女の顔は絶望と恐怖でぐちゃぐちゃに歪んでいた。
「本当にこんなのが美味いのか?」
まだ若い女性の声。
暗闇から少女を見つめる二つの瞳は赤く怪しく揺らめいている。
その疑問に力あるその存在は大きな咢を開き嬉しそうに答える。
『ああ、これほど若くて美しい生娘は珍しい。肉は柔らかく汚れを知らぬその体は最高の味がするのさ。さあ、はやく俺に食わせてくれ!」
「ふむ、お前が美味いというのなら事実なのだろう、だがこの娘の肝だけはもらうぞ。お前の話なら肝はどの動物でも最高に美味いのだろう?」
『ああ、かまわんさ。さあ早く!』
興奮でもしているのか、力ある存在は背中の翼をはためかせ、長い尻尾を地面にたたきつけた。
「ん”んぶぅーっ!! んん”ーっ!!!!」
縛られた少女は泣きながら何か言っているようだが暗闇から現れた魔導士の姿をした小柄な少女は何の感情も示さず力ある言葉を口にする。
とたんに拘束されていた少女ははじける!
ぶしゅっ!
ぐしゃぁーっ!!
ぴとっ。
飛び散った血の一滴が魔術師の少女の顔につく。
目鼻の均整がとれた陶器のような美しい顔に怪しく揺らめく赤い瞳、銀色の髪の毛は薄暗い部屋でもうっすらと輝いている。
魔導士の少女は肉塊となったモノに無造作に手を突っ込みその肝を引き抜く。
「これがそうか? これで本当に美味いものが作れるのだな? 赤き竜よ?」
『ああ、俺の知る限り一番うまい所だ。すぐにダメになるから早く食った方が良い。生で食えば最高だぞ! それと、もういいだろう? 残りは俺に食わせろ! この世で一番うまいものを教えてやったんだからな!!』
魔術師の少女は好きにしろとだけ言ってこの場を離れる。
獣が肉をむしばむ音だけが響く地下を魔術師の少女は後にして手の中にあるまだ生暖かい肉の塊を見る。
「こんなものよりホットケーキのほうがずっとうまいと思うのだがな。しかし私は美味いものを献上しなければならない、あのお方の為にも」
そう言って魔導士の少女は空いた手で頬についた血をぬぐい取るのだった。
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