第10話 月曜日、放課後 その二

「ねえ、みづきさん」

「なあに?」

「みづきさんは、ぼくといっしょに帰ること、イヤじゃない?」

「どうして?」

「だって、ぼく、告白したから」

 そういえば、いろいろあって忘れかけてたけれど、あれって本当に告白だったのね。でも。

「別に、イヤじゃないわよ」

 そういえば。

「ねえ、どうしてかおるさんは、私のことが好きなの?」

「だって、みづきさんはまじめだし」

 まじめ。圭にも言われた言葉。あのときは圭の口調にちょっとイラっとしたけれど、 かおるさんは私のこと、ほめてくれてるのよね。

「責任感があって、正しい行動をしてるから」

「そうかしら」

 全く身に覚えがないわ。

「修学旅行のときさ、みんながぬぎ散らかしたくつ、一人で全部そろえてたよね」

「え? それだけ?」

 大したことしてないじゃない。それに、私からすると、当たり前のことなんだけど。

「それだけって言っても、実際、みづきさんしかそういうことしてなかった」

 まあ、あのときはまだ、クラス委員の仕事にげた箱の整理なんかなかったけれど。ていうか、見てたんだったら手伝ってくれたら良かったのに。

「ぼくは、正直、めんどうだと思った。自分のだけそろえとけば良いだろうって」

 いや、私もめんどうだとは思ったけれど。それにしてもあの状態はひどかったから、そのままにしておくわけにはいかなかったし。

「だから、ああいうことが自分からできるみづきさんを尊敬する。それに……」

「それに?」

「今日だって、ぼくが連れて行かれないように、声をかけてくれたんだよね」

 そう。圭がかおるさんを男子トイレに連れて行くよりも先に、私が話しかけてちがう場所に行けば、連れて行かれることをカイヒすることはできる。先手必勝ってこういうことをいうのかしら。

「それで、やっぱりみづきさんさんはそういう人なんだって思った」

 そういう人って、まじめで責任感があるって意味かしら。

「これまでよりもっと好きになった。助かったよ。ありがとう」


 いくら好きと言われても、見た目がカッコよくても、かおるさんはやっぱり女子だし、今のところ、レンアイの対象としては見られない。だけど今はとりあえず。

「かおるさん、明日からもいっしょに帰っていいわよね」

「うん」

 こんなので良かったのかしら。圭とかおるさんの問題を解決したことにはなってないし。だけど今の私にできることはこれが精いっぱい。

 あの本に書いてあったはるなんとかさんの言葉。こういうことで良いのかしら。

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