第8話 休日
月曜日なら話し合いしても良いって言ってたけど、圭のあの調子なら、またなんだかんだ理由をつけてにげられそうね。どうすればいいのかしら。
私のことじゃないから放っておく? ううん、それだけはできないわね。後味が悪いもの。
さっきから頭の中がぐるぐるしてて、何にも解決方法が思いうかばない。なんかむしゃくしゃする。もう、こんなときは気分転かんね。
「お母さーん、出かけてくるー」
「どこ行くのー?」
今日はだれとも約束してない。どこにしようかしら。思いつく所といえば。
「図書館に行くー」
「そおう? おそくならないようにねー」
とりあえず来てみたけれど、なんとなく、いつも読んでいるような小説は読む気にならない。適当にぶらぶらしてたら何か見つかるかしら。
あ。『小学生のきみたちへ――有名人たちからのお手紙――』って。たまたま目に入った。「小学生のきみたち」って、なんか、私にむけて呼びかけているような。でも、どうなんだろう。目次には何が書かれているのかしら。
勉強がきらいなきみへ。親とうまくいかないきみへ。いじめられているきみへ。
いじめられているきみへ? いや、私はいじめられていないんだけど。このページにあるのって……。
これと似た言葉、前にテレビで聞いたことがある。ていうか、アレじゃない。はるなんとかさんがトーク番組で、何か質問されたときに答えてたやつ。あのときはこんなに長くはなかったけれど。このお手紙を書いた人はって……。ほら、やっぱり。
有名人って、てっきり教科書にのっているような昔の人たちの言葉が書かれているものだと思ったけれど、ちがったのね。それにしても、あの人今高校生なのにこういう本の文章も書いてるんだ。すごい。
えっ。はるなんとかさん、いじめられてたことあるの? テレビではいつも明るくしゃべっているから、とてもそうは見えない。しかもその理由って、かおるさんと重なるところがあるじゃない。
だけどあの人、今はもういじめられてないのよね。良かった。ひと安心。ということは、圭とかおるさんの問題も、解決する方法があるっていうことよね?
ダメだわ。圭をどうにかする方法は書かれていない。……でも、もしかしたら、かおるさんが男子トイレに連れて行かれることを止めるだけなら、できるかもしれない。
うーん、もっとくりかえして読んでみたら、この本からヒントを手に入れられるかしら。とりあえず借りて、家でゆっくり読みながら考えよう。
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