第9話
「だから私が押さえつけたの」
「そっ、そうか。ありがとう」
「とりあえずは安心ってことね」
――とりあえず?
もちろん俺は聞いた。
「とりあえずって、今、影を押さえつけたけど。しばらく経ってからまた現れるってことはないのか?」
真里沙は少し考えてから言った。
「生霊やドッペルゲンガーについての報告霊はたくさんあるけど、影についての報告は少ないのよ。でも私の知っている限り、同じ人に間を置いてまた現れたって話は聞いたことがないわ。まあ、少ない報告礼の中で、最初に現れたときにそれをなんとか乗り切った人は、更に少ないんだけど」
「……」
「報告例は少ないけど、それでも影を二度見た人はいないみたいね」
「……」
そう言って微笑む真里沙を見ても、俺は何も言えなかった。
恐怖、驚愕、感謝、不安。
さまざまな、それでいてそれぞれに強烈な想いで、頭も胸もいっぱいになっていた。
あの日から二年のときが過ぎた。
実生活ではいろいろとあったが、少なくとも影をふくむ超常現象的なことは何一つお目にかからなかった。
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