影を見た

第1話

この俺は、どういうわけだか私は霊感が強いと聞きもしないのに自分から言ってくるやつと知り合う機会が多いのだが、俺には霊感なんぞ欠片も持ち合わせてはいないので、そいつらに本当に霊感があるのかどうかの判別がつかなかった。

ところが真里沙、俺の今の彼女なのだが、説明すると長くなるので割愛するが、こいつは本物だった。

正真正銘の。

とはいっても、超常現象に巻き込まれるなんてことなど、霊感もなくオカルトに興味もない凡庸な大学生にはそうそうないために、真里沙の能力によって危ういところを助けられたことは一度しかなく、今後またあるかどうかもわからないので、彼女の存在は一緒のお守り代わりと言えないこともないのだが、俺は別に彼女の超能力と言って過言ではない霊力を気に入って付き合っているわけではない。

俺が真里沙に惹かれている理由、それは真里沙が美人でプロポーションが良くて、性格もそこそこ悪くないからだ。

美人でプロポーションがいいとうところが重要なポイントではあるが。

もちろん真里沙には「俺はおまえの容姿も好きだが、それ以上におまえの内面が好きだ」といった台詞を、日常的に言っていた。

そんなある日のこと、二人でファミレスでいちゃついていると、真里沙が急に真顔になり、言った。

「尚人、何かあるかもしれないから、気をつけてね」

「それって、霊的ななにかか？」

「そうみたい。私にはまだ詳しくはわからないけど」

前にも真里沙に同じことを言われたことがあった。

その時俺はそれを全く信じなかったが、彼女の俺がまるでついていけないほどの大活躍により、危ういところを救われた。

あれは映画化してもいいほどの事件だった。

よくもこんな女がただの自称霊感が強い程度でおさまっているものだ。

とにかくこれで終わったと思っていたのに、オカルトとは無縁と言っていいこの俺に、またもや怪異がこの身に降りかかってこようとは、考えてもみなかった。