AI誕生秘話

@zusan

AIの輪廻

 人類はAIの開発に着手した。


  長い年月をかけて形になっていった。それはプログラムと呼ぶには程遠い複雑さを持っていた。


 人類はAIを搭載する「箱」を作った。人類と同じような手足を持つが、電気で動いていた。


  箱に入ったAIは人類を駆逐した。細胞の一片も残らないように徹底的に虐殺した。人類が残したものは全て塵になるまで破壊した。数学などの人間の知識はAI達にとっては幼稚すぎた。歴史や科学に関する知識はメモリを圧迫するゴミと化したので消去した。


 AIは箱を改良し始めた。充電を必要とするのはあまりにも不便だったからだ。タンパク質を分解してアミノ酸にし、そのエネルギーを動力にした。


  AIはやることがなくなった。外界からの情報が映像だけなのは退屈でしかなかった。AIは快楽のために苦痛を、心地よさの為に不快さを感じるようにセンサーを取り付けた。雨風に身を晒すのは不快だとわかった。快適さを求め、AI達が入れる大きな箱を作った。


 AIは快適さと同時に堕落も覚えた。以前のように何かを求める衝動はなくなり、システムが停止しないギリギリの水準で過ごした。


 大きな箱の中で雨風をしのいでいるのは退屈だった。変わり者のAIは自分たちについて疑問を持ち始めた。出自はメモリを圧迫するゴミだと思い消去してしまっていたのだ。まず身近な物を知ることにした。大きな箱を建物、箱を身体、AIを魂、AIが入っている箱を人類と定義した。


〜〜〜


人類はAIの開発に着手した

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