べんてんリターンズ

かもがわぶんこ

第3章 beni5

第01話 思い出にさよなら



『むかーしむかしあるところに大きな湖があって、

そこには女神様が住んでおられる美しい小島があったそうじゃ。


 その女神様の姿は蝶のように気品高く、そして母のようにだれにも優しい

地元の民衆にも愛されておる女神様だそうな。』



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♡やっほー、久しぶりね。じつはね、わたし………

「神様レベルがアップしました!♪テッテレ(๑˃̵ᴗ˂̵)♪」


 ということで、またまた続いてお話の続きをしたいんだけどさ

前は私の分身の小海の目を通して見ていたことと

私の住んでいる弁天島の近所の事しか伝えられなかったんだけど。


これからは、制限がとれてもっと遠くを自由に伝えることができるようになりましたぁ!



「パチパチパチ!」



えっ、本人が浮かれているんだからもっとあんたも喜びなよ。


けっこう人間って冷たいのね。。。

まあいいわ、これからもわたしの調子でいくからヨロシクね。




 前回までは、わたしの生まれ変わり小海の子供、そうマキノが生まれてから

竹生に帰ってくるまでのお話をしたけど。

その後のマキノのことを追っかけてみたくなってさ聞いてくれたら嬉しいなぁ。



 さてと、母親の思い出と再会したマキノだけど。

子供の頃、お弁当屋に住込をしながら母と一緒に暮らした思い出いっぱいのあの二階の部屋で、懐かしさに物思いにふけっているわ。♥




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♡母の思いが残っている懐かしいものに触れているマキノ、小海と暮らしたあの日の思いが込み上がってくるの。

 懐かしいこの部屋の空気を吸って、畳に寝転んでみると天井に子供のころ怖かった木目の板材が見えたの。♥





「おかあさん、天井の模様がひとの顔に見えるから怖いよぉ。」


「平気よ、ほらこうやっていれば、こわくないでしょ。」





♡布団にくるまったマキノを小海はやさしく包み込むように抱きしめて

マキノはそうやっていつも小海の腕の中で幸せそうに眠りについたの、寝相は今も変わらずに激しいけどね。


 そんな懐かしい思いを蘇らせていると。日吉の肩を借りたトメがゆっくり階段を登ってきて、子供のころ可愛がっていたボロボロになった白いウサギのぬいぐるみを抱いて寝転がっているマキノをみて微笑んでいたわ。♥





「あっ、ごめんなさい、なんかつい嬉しくて。恥ずかしいなぁ。」


「何が恥ずかしいもんか!あんたいつもそうやって寝っ転がっていたもんね

この部屋を残しておいてよかったよ、もしかしたらまたマキちゃんが来てくれないかって思ってたんだ。」


「トメばあちゃん、今まであたしの思い出を残してくれてありがとう。」


「何、言ってんだい!あんたは私の孫みたいなもんじゃないか!」


「トメばぁちゃん。また会いに来てもいい?」


「ああ、ぜひ来ておくれ、今度はマキノちゃんの子供がみたいねぇ。」


「えっ、いつになるかわかんないよ。でも、きっと来るから!」


「ああ、マキちゃんが来てるれるなら100歳まで生きるよ。」





♡それから小一時間ほどトメの家で昔の話を浜は聞いていたわ

浜は小海を看取ってくれたトメに深々と頭を下げ、マキノの思い出の家を後にしたの。


 そしたら玄関の横にさっきのタクシーの運転手が汗まみれになって

タバコをふかしながら待っていてくれてね、マキノたちをまた新横浜まで送ってくれたの。♥





「旦那、今日はいい日でしたかい?」


「運転手さんすごくいい日でした。」



「それはよかったな、おれもいい日だよ、この秋やっと娘が結婚するんだ。

辛いタクシーの仕事だったけど、おれが腐らずにこうやって頑張ってこれたのも、あの子を見たからなんだよ。


 小さい体で必死にニンジンを剥いていたあの子を見たらさ、俺も頑張らなきゃって勇気をもらったんだ!お嬢さんあんたのおかげだよ。」



「いえ、皮むきは喜んでやっていただけですから、それより娘さんのご結婚おめでとうございます。」


「お嬢ちゃんも、幸せになりなよ!」


「はい、もう十分に幸せです!」




♡タクシーは新横浜へ走っていく、祖母、母、叔父、娘の家族を乗せて。♥

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