第4話
又しばらくしてから、今朝見てしまった。何人かを別々にたが、よく見る、あの大人しそうなオジサンも又例のマンション付近で。 あの人ももう完全に常連だ。もっと前には普通に、警察署直ぐ側のバス停から降りて来て出勤していたのに。ブルもそうだ。どちらも、(外見ではないが) 似たタイプだ。 そして今日、私は警察署目の前の横断歩道で一緒になる。わざと余り見ない様に少し後ろに犬と立つ。(いつも)私の顔を見ない様にしているから悪いと思って。自分も内心は分かっているんだろう…。妻を裏切り、ホステス宅に泊まり、そこから出勤しているのだから。それともそんなのは関係ないし、もう慣れっこかな?男だから大した事でもないのか? その横断歩道に、違う男も現れた。かなり太った、相撲取りの様な、もっと若い男だ。私達が立つ右側の、ファミリーマート前の横断歩道から渡って来た。眼鏡をかけて、髪型は上だけが丸くカットしてあり、下は全部刈り上げている。目は大きくて色白なのだが、(悪いが)全体的にかなりのブサメンで、この警察署の男達の中でも恐らく底辺のルックスだろう。(普通の感覚なら、誰が見ても皆そう思うと思う。) だが、最近この男もこのホステス宅への泊まり組のメンバーだ。そして私服に大きな黒いトートバッグか何かを肩に下げ、紺色のワイシャツに茶色いベルト、白いズボンを履いたりして、夕方のバス停に立つ。翌日はマンション側の小道を出て、間近のセブンイレブンに入ってから出勤するのを見たりする。 ブサメン故にオシャレをしないと相手にされないと認知済みだから、そうした格好を最初の頃はして店に行ったのか?確かにまだマシで、多少スッキリは見える。濃い原色のシャツの効果だ。中々良いよ、ちゃんとにカバーできてる!後はもっと痩せたら良い!!警官だから、その方が良い筈では?最近は又皆と同じ白いワイシャツに黒かグレーのズボンに、仕事様のバッグパックに戻った。太鼓腹をした、タヌキの置物的な男だ。 この彼に例のオジサンが話しかけて、二人して笑いながらの雑談。少し後ろには私と犬が、赤信号が変わるのを待つ。ここ、割と長いから! 最後の方になるとオジサンが私の事をチラッと小馬鹿にした様に見る。じゃあ私の話をしていた訳? 朝っぱらから女の噂話、悪口を?? でもこのオジサン、後ろから見ていたら分かった。かなり年いってるなって!!もう少し若いかと思っていたけどかなりシワがある、首や耳周辺に。かなり苦労してるから老けているのかな、いや、やはり結構いってるんだろうね? でも、実は優しそうで、人が良さそうな。タヌキみたいなブサメン君もそう。 だから、普通のキャバクラでならやはり(余り)もてないだろうな?若いホステスとの肉体関係はまず無理だと思う!!自分達もよく知ってるんだろう。 だけどそうしたメンズも相手にしてくれる女がいる。彼女達は平気。それは彼等が、中身は優しいとか悪くない。良くしてくれる。尽くしてくれる。なら、日本人の若い女が相手にしないブサメンや、滋味でつまらないっぽいオジサンでも相手にする。 そして彼等は、その相手にしてくれる彼女達を批判していると思う相手を嫌い、腹が立つ。当然だ。公衆便所だなんて言われたら!又、自分達が浮気していて、そんな所から出勤していても、その妻の事を侮辱されたら、不快にならなければおかしいのだ。 そして、悔しいから相手を馬鹿にしたポーズを取り、笑う。だから私も、そうして悪口を言われても仕方ないのだろう。 だが、"公衆便所"に関しては私自身が考えついた言葉でなく、他の(日本人)ホステスやお客が言っていたのだが。そして聞けば、あぁそうか?!、と部外者なら(普通)、悪気なくうなずけるかもしれないのだ。 そういや、昔こんな事があった。働いていたそのお店で、一度誰か女のコがフィリピン人の娘と喧嘩をした。客の事でだ。 たまにあった。フィリピン人の娘がよく他のホステスのお客を取ったりして。寝取るのだ。それで若い日本人のホステスが、「何をやってるんだ、この公衆便所!!」、だとかを言ったのだ。 私や他のホステスは黙って見ていた。確か店が終わって、外での出来事だ。そうしたら、相手が平然とこう切り替えした。 「だから、何?公衆便所、必要だよー?! だって、無いとオシッコできなーいから〜!!」 ちゃんとに割り切っているのだ。でなきゃ、開き直りだろう。又は、罪悪感や恥ずかしさとかが無い。恐らくはこれがメインなのではないかと当時思った。違う環境から来てるのだから。 私自身にも思い当たる。私が、平気で自身をアメリカ兵の子供だ、私生児だ、と言えたのも。私の生まれた時代はそれはさほど珍しくもなかった。 又、うんと年下の、ミスった(ヘッポコ?!の)小松菜警部補を可愛いだとか、割と好きだとか言ったのも。(若いし、割と可愛らしいからだ。) そして、恐らくは年が初老だとかの年齢になり、若い時と違い余り羞恥心がなくなり、多少の事は平気になったのだ。それと、やはり長年生きて来ての開き直り。 欧米に住んだり、そうした血が混じっているからでもあるのだ。そして、欧米にいると、(日本ではまず違うし、モテないが)、何故か真逆になるし、なった。少なくとも見た目だけだと、いつもかなりそうだった。 だから、ある意味自信が付いた。だから、気にいればその男を褒めたり、良いと言える。年が違うだとか、本当に付き合うとか関わりがある相手ではないから、余計に平気なのだ。 それと私はかなりの大根足で、自分のふくらはぎは嫌いだが、これがアメリカでは馬鹿ウケでいつも大多数の男に褒められた。 いきなり、知らない若い、とか中年の男が飛んで来て足を褒める。何度もあった。本当に凄かったから、呆れ帰り、最初は信じられなかった?!だがからかっているのでは無く、本心からだというのは分かった。 だから、アメリカではふくらはぎが太く、足首は細いのがきっと良いのだろう?今もか?、だが、特に昔は?何かアバタにエクボ的だ。だがそれが私には安心できた。 だからあのオジサンや、太鼓腹のブサメン君だって気に入られたり、逆に、悪口で"公衆便所"と言われる様な若い外人(ホステス)の女のコを気に入る。 互いに馬が合い、気に入るのだ。ましてや自分達は、普通ならそうした風俗店でしか受けられない様なサービスを受けているんだから当然だ。 彼等には私がこの女達にヤキモチを焼いていると思えるだろう。(もしくは思いたいかもしれない?) だがもし仮にそうなら、只若さにだ。相手や、相手の立場ではない。 顔なら、比べて特に劣らないだろう。特に若い時なら。身体も昔、華奢で折れそうだったし(笑)。 立場を羨むなら、夜に働いたり、既婚者と付き合うとかをしなくて良い立場の若い女が良い!(そういうのはもう経験済みだから。) うんとお金があるとか、昼間に沢山稼げる、賢い女になら焼くだろう。只のキャリアウーマンではなく。(私の母がキャリアウーマンで育児が祖母任せだったから、やはり余り惹かれないのだ…。)
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