第99話

さてと・・・どこがいいかな・・・


「5番乗り場がいいよ。初心者向きだから」

聞き覚えのある男の人の声に振り向く。


「秋吉さん?」

「泰道くんも、釣り?」

「ええ。イワトビペンギンのQちゃんの・・・」

「僕は、アザラシのまるちゃんだよ」

秋吉さんも、育てるように仕込まれたようだ。


「チャコから頼まれてね」

チャコ?ああ、久子さんか・・・


「泰道くんは、初めてか?」

「ええ。朝、調理場に釣りざおと、さくらからの手紙がありまして・・・」

「俺は、3回目だ。時々あるんだな。あそこは・・・」

時々では、ないと思う。


「じゃあ、行こうか。5番乗り場へ。少しなら教えられるよ」

「ありがとうございます。でも・・・」

「でも?なんだい?」

「朝飯まだなんで・・・」

「じゃあ、チャコからの弁当をわけてあげるよ。たくさんあるし」

好意に甘える事にした。


「ありがとうございます」


2人で5番乗り場へ向かう。


ボートに乗り、少しだけ沖へと出る。

僕と秋吉さん以外にも、ちらほらいるようだ。


まあ、シーズンではないからな。


ボートの上で、朝食を食べる。

「たくさんありますね。」

「チャコが、スポーツ選手はたくさん食べろって、作るんだよ」

「食が太いんですね」

「いや、俺でも多すぎるから、内緒でわけてる」

「怒りません?」

「いや、おそらく気付いているだろう」


久子さん、秋吉さんには、いい相棒だな。

僕には合わないけど・・・


「どうだい?チャコの弁当」

「美味しいですね。少し、濃いですが・・・」

「泰道くんは、関西人?」

「ええ。半分ですが・・・」

「外国人みたいだな」

2人で談笑する。


さくらには悪いが、料理の点なら完全に久子さんを、下回る。


「さてと・・・そろそろ始めるか?まるちゃんとQちゃんが待ってるぞ」

「そうですね」


秋吉さんと背中合わせになり、釣りを始める。


エビやイカは、釣れるのか?

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