第87話

「泰道くん、お疲れ」

さくらとツーリングで、かすみ静養所に戻ってきた。


「どうだった?私のひいおじいちゃんと、ひいおばあちゃん」

「ああ。元気だし、仲良さそうだね」

「うん。もうじきダイヤモンド婚式なんだ」

「それは、おめでたいね」


待てよ。

ダイヤモンド婚式は、60年。

それより上は・・・


確か、ひいひいおじいちゃんと、ひいひいおばあちゃんも、ご健在なんだよな。


まあ、さくらの家庭の事には、こちらからは口を出さないでおこう。

それが、礼儀。


「泰道くん、おばあちゃんのレイアウト」

「ああ、たくさんあったね」

「何か気がつかなかった?」

「現在は、走ってない車両ばかりだったね」

「正解。さすがだね」


現役の車両は、乗ることができるので、興味のない人も多い。

ひいおばあちゃんも、懐かしさで集めているのだろう。


まあ、いい。

部屋に戻ろう。


「泰道くん、待てい」

「さくら、どうしたの?」

「先日、言ったよね?」

「何を?」

「ニコンくんに、乗りたいと」

確かに言ったが、あれは・・・


「乗せてあげる。みずほお姉ちゃん」

「はーい」

みずほさんが、ニコンを連れてやってきた。


「泰道くん、今度は私とデートだよ」

みずほさんは言うが・・・


「でも、それっていけないことじゃ・・・」

「姉妹なんだから、気にしなくていいよ」

そうは、言っても、休みたい。


「・・・で、どこへ行くの?」

「さくらから、訊いてない?」

「うん」

「ひいひいおじいちゃんと、ひいひいおばあちゃんのところ」

立ちつくした。


「でも、田舎なんでしょ?」

「大丈夫。ニコンくんなら、すぐだから」

「どのくらい?」

「片道、30分。さあ乗って」


有無を言わさず、乗せられる。


えっ、30分?


「お姉ちゃん、泰道くんをエスコートしてね」

「了解」


ニコンは、駆け抜ける。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る