第84話

「4姉妹とも?」

「うん。だからキスは、挨拶みたいなものだから、平気」

そうなんだ・・・


ホッとしたような・・・

残念なような・・・


(あのキスだけは、違うよ)


さくらが呟いたのは、僕の耳には届かなかった。


「じゃあ、泰道くん、少し寄道していい?」

「いいけど・・・どこへ?」

「近くに住んでいるんだ」

「誰が?」

「エヘヘ」


さくらは、悪戯っぽく笑う。


ある家の前で、さくらがベルを鳴らす。

かなり大きな一軒家だ。

誰が住んでるんだ?


すると中から、おじいさんとおばあさんが、出てきた。

かなり年配だが、とても元気そうだ。


「おじいちゃん、おばあちゃん、久しぶりだね」

「さくらちゃん、久しぶりじゃな。仕事はどうじゃ」

「うん。がんばってるよ」


楽しそうに談笑する、さくらたち。


しばらくして、さくらが僕を手招きしている。

僕は、そばに駆け寄った。


「おじいちゃん、おばあちゃん、彼が私のお友達の、会田泰道くんだよ。

私より、一学年したなんだ」

さくらが、紹介してくれたので、僕も名乗った。


「初めまして。会田泰道です。さくらさんには、いつもお世話になってます」

丁寧に挨拶して、少し調子が狂う。


・・・って、待て・・・


「さくら」

「何?」

「さっき、おじいちゃんとおばあちゃんは、もう他界したって」

さくらは、悪戯っぽく笑う。


この姉妹のクセなのか?


「なんじゃ、さくらちゃんは、また言わなかったのか?」

「うん」

当たり前のように頷くさくら。


またということは、前にもあるのか・・・


「泰道くん、わからない?」

「うん」

「教えてあげる。おじいちゃんとおばあちゃんじゃなくて、ひとつうえ」

「というと?」

「正しくは、ひいおじいちゃんと、ひいおばあちゃん。つまり私はひ孫」


なるほど・・・


でも、ひいおばあちゃんのほうは、寡黙な方なようだ。

時代のせいかな・・・


「ちなみに、ひいひいおじいちゃんも、ひいひいおばあちゃんも、元気だよ。

もっと田舎で、暮らしているけどね」


なんとまあ・・・

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