第79話

ここへ来てから、気になっていた場所がある。

お風呂番の角を曲がったところにあるドア。


いつも、暗く閉ざされている。

鍵がかかっている。


一度だけ、開けようとしたことがあるが、千夏さんに止められた。


最近のあわただしさもあり、気に止めなくなっていたが、何故か気になりだした。

気になりだすと、落ち着かないのが性。

思い切ってドアを、開けてみる事にした。


鍵は・・・閉まっていない。

ドアを開ければ、確認できる。


できるが・・・

「まさか、あの動物が大量に飛び出してくるなんてことはないな」

そう、暗闇で集団で生活しているあの動物・・・


まあ、固定観念もあるが、暗闇というイメージの強いあれ・・・


「いくらなんでもね」

その期待を、裏切ってくれる事を願う。

第一、ここで生活出来るのか?


そして・・・

ドアを開けた。


そして思った。


「期待に応えてくれて、ありがとう」と・・・


「やはり、ばれたか・・・」

さくらがいた。


「いや、もう驚かない・・・」

「うん、感心、感心」


コウモリ。

漢字で書くと蝙蝠。

でも、書ける人は少ないと思う。


「さくら・・・」

「何?」

「いつも、タイミング良く現れるね」

「君とは、ツーカーの仲だもん。全てお見通しだよ」

「・・・そう・・・」


「泰道くん」

「何?」

「あの子たちは、それぞれに名前があるんだよ。」

「可愛いんだね」

「うん。あの子は女の子のアン。あの子は男の子のブーちゃん・・・」

「いや、いい」

覚えきれない。


「変わった鳥だよね、コウモリ」

「あのう、さくらさん」

「何?」

「わざと間違えたと思うけど、コウモリは哺乳類。鳥じゃない・・・」

さくらは真顔になる。


「本当?」

僕は、頷く。


「どうして、あの子たちがいるのかというと・・・」

さくらは話をしだすが、阻止した。


頭が痛くなる・・・

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