第59話

風呂に直行した。

さすがに、疲れた。


湯船の中で、さくらとの会話を思い出す。


「さくらも、泳げなかったんだ」

「うん。でも、それで終わりたくなかったから」

「うん」

「犬かきだけでも、マスターしようよ思ってね」

「できたんだ」

さくらは、頷く。


「でも、私は欲張りだから」

「うん」

「うん?否定しなさい」

「さくらさんは、謙虚です」

「嫌味はやめなさい」

「さくらさんは、向上心の強い方です」

「よろしい」

さくらは、笑うが・・・

笑顔で、言わないでくれ。


「それで、頑張ってマスターしたんだ」

「独学で?」

「うん」

「凄いね・・・」

「尊敬した?」

「うん」

真面目に凄いと思う。


もしかして、ロボットかサイボーグだったしりて・・・

まさかね。


部屋に戻る。


とても、疲れた。


「そうだ・・・晩御飯・・・」

大変だと思ったが、慣れると楽しい。

気分転換になる。


でも・・・

ここは本当に、どういうところなんだろう。


炊事場についた。


「あれ?だれかいるのか?」

包丁の音がする。


ノックして開ける。


「あっ、泰道くん。」

「さくら、どうして?」

「ここは、私の調理場だよ」

「でも、さくらは・・・」

さくらは、笑みを浮かべる。


「いつまでも、君にまかせておけない。今日からは、交代制ね」

「交代制?」

「うん。今日は、私が作るから・・・」

簡単に言わないでほしい。


「痛い」

さくらを見る。


「どうした?」

「指、切っちゃった。ははは。慣れないことはしない方がいいね」

さくらの指から、血が出てる。


思わず駆け寄って、その指をなめた・・・


「あっ、ごめん・・・つい・・・」

僕は、とんでもないことをしたのか・・・


でも、体か勝手に動いた。


「ううん。いいよ。ありがとう」

そういうと、さくらは唇を重ねてきた。


「優しさを、ありがとう。大好きだよ」



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