第10話

「消灯は、11時だから、それまでは、好きにしていて」

「OK]

「明日、他の方に紹介するから・・」

「わかったよ」


部屋まで送ってもらって、お休みのキスをしてくれた・・・

なんてことは、あるはずもなく、ひとりで部屋まで戻る。


ベランダに出ると、真っ暗。


ただ、向こうに灯りが見える。

「駅だな・・」


何もないのか、列車の音は聞える。


「少し探検してみようか」

外に出た。


オートロックになっているので、泥棒に入られる心配はない。

まあ、何を取られてもいいのだが・・・


あちらこちらの、ネコの爪とぎ器がある。

「ポチ以外にも、たくさんいるんだな」


「おや、新しい入居者さんかい?」

初老とご婦人に、声をかけられた。


「はい、会田泰道です。よろしくおねがいします」

「泰道くんね。私の事は、千夏さんでいいからね」

そういえば、ファーストネームで呼び合うようにと、さくらは言ってたな。


「泰道くんの、担当はどなた?」

「椎名さくらとか、言ってました」

「ああ、さくらちゃんね。なら、あなたはしっかりしてくるね」

その笑みには、悪戯っぽさがあった。


でも、わかる気がする。


「で、泰道くんは、どちらへ?」

「ちょっと探検を・・・」

「じぁあ、あの角を曲がったら、気を付けてね」

「ありがとうございます」


千夏さんに、さっきのポチが寄り添ってきた。

なついているのか?


で、角を曲がる。


「今度は、これですか・・・」

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