私と貴方の学園生活

Twilight

第1話

俺の通っている学園は元々は女子校だった・・・らしい。


 


そう、「だった」だ。


今では政府から要請があったらしく共学になってしまっている。


その理由としては日本が超高齢化社会になってしまっている。その一点だろう。


近年日本では少子化も相まって学校学園などの公共施設には共学や男女混合になることに決まった。


そしてこの学園にもその余波が届き元々共学化させようとしていたここの学園長は喜んで承諾した。


だがこの学園の校風故か男子の入学試験に少し厳しくしたせいか全くもって男子が入ってこない。それに痺れを切らした学園長が教員でもいいから男を入れるぞ、ということで親戚であり教員採用試験を今年取得した俺、柊 奏介が面接も無しに即採用され、勤務することになった。


いきなり説明も無しに即採用とか、あの人アホか?


そうして学校が始まり新学期となった。


そのタイミングで俺も学校に勤務し始めたのだが、これがまた大変だった。ほとんどの生徒は女子、まぁそれに関しては最初から聞いていたがその女子が問題だった。やたら好意を持ってくるのだ。


今までずっと女子校という囲いの中で生活していた女子高生だったか、その中に男性が入るという刺激にはなかなか来るものがあったようだ。


担当を持つ事になったクラスの女子生徒たちは担任が俺だと気づいた瞬間狂喜乱舞のあまり気絶した女の子までもいた。


そこまで優れた容姿ではない俺がなぜここまで人気なのかさっぱりわからない。どこぞのラノベ主人公じゃあるまいしここまでなるかと疑問に思ったが、まあそんなものなのかと割り切り、俺の教員としての学校生活が始まった。


 


だが元々不真面目な上に教員になったのも「マトモな職業についといた方がいいだろう」という考えでなったため(しかも取っておいた方がいいだろうという考えでしかなく、資格を取ったあと別の資格を取ろうとしていた)もちろん真面目にやろうとはしなかった。


流石に上の先生にバレでもしたら不味いのでそこは上手くバレないようにやっている。


そうしていつの間にか俺の一つの楽しみになっていた昼寝今となってはこれだけが俺の至福のときジャスティスとなっていた。


 


「柊先生、起きてください

時間過ぎてますよ?」


 


そんな俺の至福のときを邪魔する不届き者の声が聞こえる。仕方ないそんなに起こそうとするなら内申点を下げてやる。5徹の俺を起こそうとするやつは断じて許さん。


 


「なに言ってるんですか、内申点を脅しに使うのはやめて下さい。」


 


おっと、どうやら心の声が漏れていたらしい。


俺の至福のときジャスティスはいつもいつもクラスの生徒に起こされてしまう。職員室で寝てようが屋上で寝てようが、はたまた用務員室で寝てようが必ず起こしてくるのだ。恐ろしくて仕方ない。


さてさて、今日は一体誰がって・・・・・・


 


「げっ、今日はお前だったか七瀬。

お前口うるさいから少し苦手なんだよ。」


 


「それを本人の、しかも生徒にいいますか貴方は。これは上の先生方に報告ですかね?」


 


「あー、わかったわかった!

起きるから先生方に愚痴るな!いや、言わないで下さいお願いします!」


 

「トドメに生徒に対して土下座・・・・・教師としての自覚はあるんでしょうか?やっぱり教育上、上の先生方に報告しましょうか?」


 


そんな恐ろしいことを呟かれ目が一気に覚醒する。流石にあの口うるせぇ教頭や学園長の事を言われると真面目にやらねば、クビが免れない!おっと、ボイコットしてんじゃねぇか!って思ったそこのお前、内申点下げてやるから覚悟しとけよ?


目を開けると長い机の上にいくつかの教科書と赤ペン、そして丸つけが終わって纏められている。


周りを見渡すと、本が何千何万という数並べられている。そう、ここはこの学園「聖アルキナ学園」の大図書棟だ。この学園の魅力の一つであり俺の中での最大の魅力でもある。五階から地下三階までありここだけでこの学園の三分の一の土地を閉める本好きおれには天国のような場所だ。


 


「全く、図書棟にまで来て昼寝とは正気ではないですね」


 


「だけどお前らは俺が何処にいても必ず見つけてくるだろ?なら何の問題もねぇよ。」


 


どうせ見つけられるんだ。何処に居てもいいだろう?


しかも必ず間に合う時間で迎えに来るのだ、本当にどうやって見つけ出しているのやら。


 


「ッ!全く、貴方って人はそういうことを無自覚に・・・・・」


 


「ほれ、早く行くぞ。

生徒のお前が遅れて来たら今度こそ内申点下げてやるからな?」


 


「ちょっ、言うだけ言って何もアクションなしですか!?あと、先生を起こしに行って授業に遅れるのに私だけデメリットじゃないですか!」


 


はっはっは!大人は汚いものなのだよ、覚えておくといい。めんどくせぇが最低限仕事しないと流石にクビだ。


 


「じゃぁ、やりますか。」


 


今日も俺の1日が始まる。


 


 


 


 


 


 


私の名前は七瀬菜月


聖アルキナ学園高等部2年B組出席番号25番です


えっ?そこまではいい?そうですか。


 


私は今アルキナ学園の誇る、大図書棟「アルキナ大図書館」に向かっています。その理由はもちろんあの柊先生です。


柊 奏介先生。年齢は24。東京の大学を卒業後1年間の空白の期間がありそこからこの学園の学園長にスカウトを受け聖アルキナ学園に就職。


 


一件見ると思う。


この空白の期間は一体何なのだろう?私は立場上この学園のことなら学園長と同等の(若干学園長の方が上の)権利がある、言うなれば生徒側の学園長だ。


それなのに私に何一つ情報がないのだ。


学園長が隠しているのは間違いないとして、一体この人は1年間何をしていたのだろうか、謎である。


 


そうして図書棟1階の個別自習部屋の一つに電気がついている。十中八九あそこだろう。


近くまで歩き扉をノックし中へ入る


そこにはスースーと寝息をたてながら気持ちよさそうに昼寝をしている先生の姿があった。


そのあどけなさに思わず可愛いと思ってしまった。


先生は自分の容姿を低く見積っているようだがそんなことはまったく無い。女子の様な可憐さと男性の格好良さがいい感じに合わさっている中性の顔に、スっと整った鼻先キリッとした目そんな人がこのほとんど女子しかいない学校でモテないはずがない。本人は「こんな中途半端な顔に一体どうしてそこまでなるのか……」と本気で悩んでいるのがはたから見たら(特に男性)とんだ嫌味に聞こえるだろう。


 


「………はっ!?、いけないいけない。

先生を起こしに来たのに見とれててはダメですね。起こしましょう」


 


そうして先生が私に嫌味を言いながらゆっくりと起きて教室に、歩いていく。


本を整理している司書さんがこちらを見て呆れているような羨ましそうな、そんな表情でこちらを見ている。


軽くお辞儀をしてそのまま歩く。あの人は先生の幼なじみで一時は先生との仲を疑われ全生徒から敵視されていたが今では何故かその噂はされなくなり生徒に人気の先生になった。


先生が来てから色々とこの学園は変わった。


それはもう、劇的とも言える変わりようだ。


空気も少し穏やかになり、今まで以上に過ごしやすくなった。


それもこれも、先生が来てくれたおかげで変わったことだ。


そんな貴方だから………


 


 


「…………私は、好きになったんですよ?」


 


「ん?何か言ったか、七瀬?」


 


「いえ、なんでもありません。

早くしないと、遅れますよ?遅れたら今度こそ上の先生方に報告しますからね?」


 


「はぁ!?いや、それだったらお前も同罪だろ!?」


 


「私の立場は知ってますよね?」


 


そう言うと青い顔をしながら「職権乱用はダメだろぉ!?」と言いながら少し急ぎ足になって歩いていく。


ふふっ、本当に賑やかな人ですね、あの人は。


 


「さて、じゃあ行きますか。」


 


今日も私の一日が始まる。

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私と貴方の学園生活 Twilight @taichika4869

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