第103話 「村上海賊の娘」の出だしがラノベな件、あらすじ詐欺からのラノベ小説の書き方

村上海賊の娘

http://www.shinchosha.co.jp/wadainohon/306882/



 図書館で予約していた「村上海賊の娘」(和田竜著、上下巻で分厚い)を読了しました。

 以下の文章でこの小説の若干の冒頭のネタバレになりますので、まだ読んでない方はご注意下さい。


 といっても、そんなにストーリーのネタバレないので大丈夫かと思います。


 和田竜さんといえば、映画になった「のぼうの城」から「忍びの国」、「小太郎の左腕」とずっと読んでるんですが、読者層が結構若くて20~30代が多いように思います。歴史小説って言えば40~60代ぐらいのイメージなのですが、これはどういうことなのかな?と以前から思っていました。


 そして、「村上海賊の娘」でついに、逆ハーレム&婚活小説という出だしになってました。

 もう会話がラノベ的というか、展開もはちゃめちゃだし、主人公の村上海賊の大将、村上武吉むらかみたけよしの娘「きょう」(20歳)はツンデレキャラだし、弟の景親かげちかの扱いが酷くて、この辺りはラノベ的展開だなと思ったりしました。



村上武吉

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%91%E4%B8%8A%E6%AD%A6%E5%90%89


村上景親(実は後の名武将です)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%91%E4%B8%8A%E6%99%AF%E8%A6%AA



 誤解のない様に付け加えると、ちゃんと時代小説としての時代考証やメインの舞台である大坂本願寺の地形の描写、木津川の戦いなどの当時の『信長公記』などの資料の読み込み、引用などもしっかりされてるんですが、泉州武士の泉州弁が面白かったり、上巻のノリは本当にラノベ的で中学生でも読めそうな感じになっています。


 「のぼうの城」でも、のぼう様こと成田長親のキャラクター、配下の個性的武将やおてんばの甲斐姫が魅力的でしたが、「村上海賊の娘」は主人公「景」が最初、婚活に悩むということもあり、女性読者も増えそうです。図書館ではそんなに沢山置いてないのもあるのですが半年待ちになってます。


 ところがですね、この作品出だしもノリもラノベ的ですが、前半の見せ場である本願寺の陸戦、後半の木津川沖の海戦においてもうバリバリの時代小説でもあります。非常に熱い展開になります。



ライトノベル作家デビューに必要な要素

http://www.raitonoveru.jp/howto/h3/479a.html



 ライトノベルって何か?というのは難しいのですが、「読みやすく、売れ線とかを狙いつつも、その作家独自の世界観を展開する」というものなんではないかと思います。


 売れ線=中学生ぐらいが面白いと感じる要素=「小説家になろう」のテンプレ的要素なんだと思います。

 ところが、この和田竜という作家は、この要素を全部抑えた上に自分の書きたいバリバリの時代小説を書いてしまってる訳です。これぞプロ!って感じです。


 ただ、和田竜さんに聞いてみたいけど、たぶん、この作品をラノベ的に書こうという意図はなかったのだと思われます。面白く書いたらラノベ的になったということだろうと思います。


 

 例えば、毎度おなじみの「幻想再帰のアリュージョニスト」(作者:最近)のあらすじはこんな感じです。


 「異世界転生保険とは契約者本人を受取人として、保険量である新たな人生を給付する制度である。無事支払い条件を満たしていたのはいいが、新たな世界で目を覚ますと何やら開幕から左手を怪物に食い千切られているという大惨事。おまけに原因不明のトラブルで言葉も通じないわ、現代日本の技術を異世界に持ち込んでしまうわで第二の人生は開始早々に前途多難。戦わなければ生き残れない仄暗い迷宮で、片腕を失った男は現代日本の技術を駆使して戦うことを決意する。現代日本の技術――すなわち、サイバネティクスの粋を集めた、機械義肢とサイバーカラテを。」

http://ncode.syosetu.com/n9073ca/


 確かに「異世界転生保険」「迷宮」とか、主人公や登場人物のキャラはラノベ的ですが、サイバーカラテにしても、異世界転生しても主人公は必ずしも最強とは言えないし、古き神話の神の力や主人の魔女の力を集結してやっと勝ってるようだし、「トラック」は出てこないし、「迷宮」攻略出て来るけど一向に進まないし、後半にかけては呪術戦闘メインになるし、と誰かが感想欄に書いてるように、いい意味で「あらすじ詐欺」的進行になってます。ある意味、正しいあらすじでもあります。


 

 作者の最近さんもこういうことをおしゃってます。


「ただ、個人的には特別な事をしているつもりはありません。

 私は凡庸な書き手で、この話にはありふれたものとありふれた話運び、ありふれた筆致しか存在していないと思います。

 どちらかといえば、私からの「全ての作家への憧れ」によってこの話は出来ていると思います。


 もちろん、書かれたものが全てであり、読者の方々が受け取った読書体験は作者の意図などよりも優先されますが。


 ただ私は、凡庸さを寄せ集めた、どこまでも普通の話を面白く語ることはできないだろうか、つまらないものを面白いように見せかける事はできないだろうか、なんて事を考えながら三章を書きました。」

http://novelcom.syosetu.com/impression/list/ncode/529021/index.php?p=3 

 


 ライトノベルって、パターン化された凡庸なありふれたテンプレを面白く語る、面白いようにみせかけている、そういうものなんじゃないかなと思います。じゃ、面白いって何?ということになるのですが、クスっと笑ってしまったり、それはあんまりじゃない!というツッコミを入れたくなるような語り口の小説なんでしょうね。面白さにもいろいろとあるだろうし、入り口はラノベ的であってもいいし、最終的にその人が面白いと思う世界を描いていけばいいのでは?と思いました。


 

 ということで、あらすじ詐欺といいますか、出だしはラノベ的だけど、結局、何か全く違う作品だよなという展開もあり!なんではないかと思いました。


 それと、ラノベとか童話とかもそうですが、その年代の視点になって物を見れると読者が増えるように思います。他人の視点をもつ、その年代の感性をもつのも大事なんでしょうね。

 


ララの古魔術書店(作者:主水さん、感想25件 レビュー3件 ブックマーク登録662件 総合評価1,589pt)

http://ncode.syosetu.com/n7843bx/


戦場のフロンティア  ~気がついたら銃と兵器のゲーム世界に生産職で転生してた~(作者:主水さん、感想44件 レビュー2件 ブックマーク登録2,279件 総合評価 5,393pt)

http://ncode.syosetu.com/n1512cg/


 お気に入り作家さん巡りをしてたのですが、主水さんの「ララの古魔術書店」初投稿が2014年 01月 08日 (改)なんですが、この一年で少なくとも200話ぐらい更新してるんですよね。エッセイ100話更新してる僕とは大違いです(泣)来年は頑張りたい!


 最初から人気がある作家さんですが、「戦場のフロンティア」のブックマークの伸びが凄くて、これは来年辺りには書籍化作家さんになちゃうんじゃないかと思いました。



 聖贄女のユニコーン(作者:陸 理明さん http://ncode.syosetu.com/n2841bx/)が「かくて聖獣は乙女と謳う」というタイトルで書籍化されたようです。


「かくて聖獣は乙女と謳う」特設サイト

http://over-lap.co.jp/bunko/narou/865540185/


 イラストかわいくて、女性が戦い話が好きなもので、ちょっと読んだりしています。

 女友達が自作「少女格闘伝説」をネットで読んで「何故、女性が戦う話ばかり書くの?」と言われたことがありますが、幼少時代に幼馴染が三人とも女性で、アイドル歌手のカラオケ、踊り、お手玉、あやとり、おままごと、混浴(よく覚えてない)が日常だったからだと思いました。家でも母親、妹ふたりで女系家族っぽいし。


 7歳ぐらいの時に、ガキ大将に女の子とのままごとをとがめられ決別するのですが、幼少時代の体験は沁みついているのか、カラオケとエアロビ、ダンスなどはやってたりするし、フリマでビーズアクセサリー売ったりしてたこともありました。

 

 それはともかく、11/25発売に向けて、ただいま予約受付中です。

 ファンの方はアマゾンにレビューなど書くといいかも。



 しかし、盗作疑惑問題に巻き込まれて、作品削除されてる作者の方もいますが、難しい問題ですね。


 小説って、何か面白い作品があって、そんな感じの作品を書きたいという衝動から出発することが多いので、それをそのまま引き写してしまうと盗作になってしまう訳で気をつけるしかないですね。


 歴史小説などの場合、戦国時代の信長とか人気有名キャラを使えるというメリットがあるかもしれません。


 ということで、お気に入り作家さんの紹介コーナー終わります。


 

 今、資格試験の勉強してるんですが、合間に小説書きたくなってしまいます(笑)


 結局、小説って自己逃避の一種で、つらい現実から逃げたい衝動から書くもので、読者もそういう現実から一時避難してほっとしたいと思って読むものなんだろうね。


 そういう小説がウケるので、主人公が読者に感情移入しやすいニートだったり、学生だったり、平凡な人が好まれるのかもしれません。



【アンケートご協力のお願い】(鼠色猫/長月達平さんの割烹ですが、なろうでウケる主人公についてアンケートの話が興味深いので)

http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/235132/blogkey/1029581/



 次回も何か思いつきましたら、更新していきます。







(あとがき)


「HINOMARU」、日本のマスコミが何だかおかしいというか、対中戦争に怯えすぎでは?/小説家になるための戦略ノート 作者:坂崎文明

https://ncode.syosetu.com/n4163bx/305/



 何となく妙な雰囲気がマスコミに漂ってるという話です。


 米国というか中央銀行システムを支配する人々(ユダヤ人?)による対中戦争、経済戦争も間近であるのは仕方ないし、日本のマスコミが神経質すぎではないかと思う。


  

2014/11/17 20:35の小説家になろう版より転載。

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