レポート39:『お前は一体、何がしたかったんだろうな』

 暗がりの部屋で、ベッドに横になり思考を凝らす。


 目安箱の『いじめ案件』。


 あれは間違いなく、富澤のものだった。

 体育館での一件を鑑みても、そうとしか思えない。


 三対三スリー・オン・スリーを挑んだのも、諸悪の根源である先輩らの性根を叩き直すため。


 けれど、気になるのは氷室の解せない二つの言動。


 名前表記のない投票用紙を富澤と言い当てたこと。


 一見、同じバスケ部なのだから当然だろうと思うかもしれない。

 けれど富澤は、今年入ってきたばかりの1年生。

 いくら部活が一緒だからと言って、気づけるものなのだろうか。


 正直、氷室なら気づけてもおかしくはないと思える。

 だからそこは、気になる点であっても問題ではない。


 二つ目もそう。


 富澤に会いに行った昼休憩。


 あの時、氷室はなぜ『違う』と嘘をついたのか。

 嘘をつく意味がどこにあったというのか。


 それがわからない。


 本当に富澤ではないのか。


 富澤でないなら、今日の三対三も、投票用紙を手にした時の富澤が先輩に絡まれているという情報を提供したことも、意味がなかったことになる。


 そもそも嘘をついたことに意味などあったのだろうか。


 瑠璃を使って生徒会長を動かし、長重を呼び、自分を巻き込んでまで先輩方と勝負させ、氷室が欲しかったもの、その動機。


 一体、何が目的で仕掛けてきたのか。


「わからん……」


 確かなのは、氷室がこの案件に便乗して何か企んでいたということのみ。


 それが不発に終わったのか、成功で幕を閉じたのかは不明だが、自分の役目は終わったように思う。


 引っかかる点が多すぎて、情報を絞り込めない。


 無駄に深読みしても仕方なく、わからない問題は飛ばすことにする。


「氷室に聞いた方が早いな」


 呑気に嘆息し、自然と瞼を閉じる。


 久しぶりの運動に疲れてか、眠りに落ちるのにそう時間はかからなかった。


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