第三章 第五話 隠し部屋

 レベッカの謁見後、俺たちは無言のまま中央階段を降りていた。


 気まずい時間が流れる。


 誰か話してくれないか?


 そう思っていると真吾が「ねぇ、カルロスさん」と先頭で歩いている彼を呼んだ。


 カルロスは少し苛立ちながら「何ですか?」と聞く。


「エルファバさんはどこにいるんだい?」


「地下の研究所でございます」


 それを聞いて俺は思わず「研究所!?」と声を出してしまった。


「俺たちが探した時、地下に行く階段ってあったっけ?」


 俺がそう言うと亮夜は「いや、なかった」と答える。


「大神様、物事目に見えるものがすべてではないのですよ」


 カルロスがそう言った時には俺たちは中央階段を降りていた。


「こちらでございます」


 そう言い彼は階段の隣を指す。


 そこは壁だった。


「壁じゃない」


「壁だな」


「壁だね」


「壁だ」


 カルロスが「フフフ」と笑い出す。


「何がおもしれぇんだ?」


「いや、まだまだ若いなと思ってな」


 そう言うとカルロスは壁に手を当てた。


 壁はみるみる扉に変わっていく。


「隠し扉?」


 神代がそう言うと「左様でございます」とカルロスが答え、扉を開くとそこには下に降りる階段があった。


 俺はみんなを見る。


 全員の視線が合う。


 俺は頷き、全員が頷いた。


「では行きましょうか」


 そう言いカルロスは先頭で階段を降り始まる。


 俺たちも追うように降り始めたのだ。


 階段を降り切るとそこには金属のような扉があった。




 コンコンコン




 カルロスが扉にノックすると、扉は横にスライドし開く。


「そこは開けないんだ」


「急に近未来っぽくなったよね」


「だな」


「あなたたち早く入るわよ」


 俺たちは神代に言われ、部屋に入る。


 部屋に入ると巨大な本棚とビーカーなどの実験用具が置いてある棚などがあった。




 ガッチャ




 ん? 何か踏んだか?


 地面を見ると歯車みたいなものがあった。


「歯車?」


「こちらでございます」


 カルロスはそう言い奥に進んで行く。


 俺たちも奥へ進んで行くと広い空間が見えてくる。


 広い空間には机に腰かけ、ティーカップと皿を持ち、壊れたノコを見るエルファバとなにかの機械に吊るされた上半身しかないノコがいた。


「エルファバ様、お客様でございます」


 エルファバが振り向く。


「あぁ、アナタたちね」


 ティーカップを机に置き、腕を組みながらこっちに向かってくる。


「いらっしゃい、なんで来たの?」


 腕を組んでいるためか黒装束の胸が強調される。


「僕が行きたいって言ったんだよ」


 真吾は手を挙げながら歩いていく。


「あぁ、アナタが……ノコなら起きてるから挨拶したら?」


「そのつもりだよ」


 そう言い彼はノコの方へ向かう。


 エルファバが真吾を見送った後、俺たちを見る。


「で、アナタは何が聞きたいの?」


 彼女の視線を追うと、神代がエルファバを見返していた。


「何? わかってたの?」


「わかるわよ。この世界——夢の世界ヴォロに関係することかしら?」


 神代は「そうよ」と返し、質問し始めた。

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