第一章 第十話 ブギーマン劇場

「うーん、どうしよう。神代 零の場所がワ・カ・ラ・ナーイ!!」


 ポケットを弄っているブギーマンが近寄る。


「ヘイ、ブギーマン。どうしたんだい? お漏らししそうなのかい? HAHAHA」



HAHAHAHAHAHA



 俺の後ろから欧米の番組っぽい笑いがした。振り向くと後ろには誰もいない。


 俺たち二人は顔を見つめ合い、ブギーマンたちを見る。


「違うよ、ブギーメェン。神代 零の場所がワカラナインダー!」


「仕方ないなー、ブギーマンは。そんな時はコ・レ!」


 そう言い、ポケットから取り出したのは、名状しがたいブギーマンによく似たフィギュアだった。


「ブギーマン、それはなんなんだーい?」


「これは神代 零の場所を言ってくれる。ミニブギーマンだ!」


「ボク! ミニブギーマン!」


 ブギーマンよりも高い声で言うミニブギーマン。そして、それを持っているブギーマンはミニブギーマンを見つめる。


「キモチワル!」


 そう言い、思いっきり地面に叩きつけた。


 ビクッ!


「「…………」」


 俺たちはバラバラに壊れたミニブギーマンと、思いっきり投げ捨てたブギーマンを交互に見つめる。


「あら、ノリの悪い人たちですねぇ。、もっとこう、うわぁぁぁ! 大丈夫かミニブギーマン! ……ハッ! 息を……していない! 仕方ないこれは人工呼吸だぁぁぁ!」



プシュープシュー



 そう言い、人形に全力で人工呼吸をする長身の漆黒肌の男。俺たちはそれをただ見ているだけだった。正直、どう反応すればいいのか分からない。というより彼に狂気的なものを感じる。正直、怖い。


「なんだこれ?」


「わからない、逃げよう」


「そう……だな」


 俺たちはゆっくりとブギーマンから離れようとするが、後ろを振り向くと、もう一人のブギーマンが脚を組み白い椅子に腰掛けながら、カップを片手にお茶を飲んでいる。


「んー、やっぱり紅茶はいいですねぇ! あら、お二人さん御機嫌よう」


 もう一人のブギーマンがこちら見て、手を振っている。


 逃げられない。俺たちは挟まれている。


「ちょっとぉ、無視ないで貰えますぅ? ハァイ、ブギーマン!」


「やぁ! ブギーメェン!」


 互いのブギーマンが手を振りあっている。


 俺たちは何を見ているんだ? 理解できない。


「これスペアなんですけど……いります?」


 そう言い、いつの間に出したか分からないが、ブギーマンの手にはアロハシャツを着たミニブギーマンが握られていた。


 俺と亮夜は目を合わした後、亮夜が震える手を出す。


「それをくれ」


「えぇ、いいですよォ。私だと思って大切に持っててクダサイィ!」


 そう言い、ミニブギーマンを亮夜の手に置く。


「では私はこれで失礼します。あっ、それから先程言ったことですが、今日は起きて頂いてかまいません。ただ……早めに解決した方がいいと思いますヨォ……ではっ!」


「ちょっと、待ってくれ!」


 咄嗟に声が出てしまった。ここは分からないことだらけだ。脳裏に浮かんだのは『異世界』という言葉。


「はい、何でしょうか?」


「ここは……ここは何なんだ?」


夢の世界ヴォロ。この世界はそう呼ばれております」



サァァァァァァ



 そう言いブギーマンは奇妙な人形を俺たちに渡し、地面に溶けるように消えていった。


 俺たちは周りを見渡す。俺たち以外、誰もいないようだ。


「何だったんだ?」


 亮夜がミニブギーマンを見ながらそう言う。


「わからない。どうする?」


「どうするって……明日、会おうぜ。で、神代に聞くんだ。お前何か知ってんだろって」


「わかった。明日、学校で会おう」


「あぁ。……すまねぇ。どうやって起きればいいんだ?」


「それは……」


 俺はポケットに手を入れ、手鏡を取り出そうとする。



ガチャッ



 ガチャ? 今、ガチャって音がしたか?


 ポケットから取り出すと、貰った手鏡と見知らぬ手鏡を握っていた。手が震えだす、いつの間に入れられたんだ?


「どうした?」


「何でもない」


 見知らぬ手鏡を亮夜に渡す。


「鏡を見つめれば、起きれるから」


「わかった」


 俺たちは鏡を見つめた。

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