プロローグ 第四話 汝を守る者

 大声で叫ぶのは先程俺を追っていた大男。


 大きい刃物を腰に二本付け、両腕には数本投擲用とうてきようのナイフを付けている。


 腰につけた刃物を一本引き抜き、こっちにゆっくり向かってくる。


 ていうかそこから三〇メートルぐらいあるんだぞ。


 どうやったらここまで正確に投げれるんだ!


 逃げなきゃ、いや……逃げれない。


 彼に背後を向けたら、投擲用ナイフを投げてくるに違いない。


 そして、足を狙って動けなくする。


 そのまま恐怖を持ったまま殺すに違いない。


 ……んっ? なんで俺そこまで予想出来ているんだ? なんで冷静に考えることができるんだ?


「行くぜぇぇ!」


 不気味な笑みで猛スピードでこっちに向かってくる大男。


 逃げれない、これはみだ。


 力を持たない俺に何ができるんだ? このまま殺されて……。




『逃げていては何も出来ず、そのまま殺されますよ』




 さっき言われた言葉が胸に刺さる。


 どっかでこんな話を聞いたな。


 目の前に虎がいて、真後ろはがけ。崖に落ちたら死ぬとしたら、君はどっちを選ぶって。


 大男は俺の目と鼻の先まで近づき、マチェットナイフを大きく振りかぶった。


「死ねぇぇぇ!!」




 俺は……立ち向かうしかねぇじゃねぇかー!




 ドクン




 全身に何かみなぎる音がする。


 振りかぶったマチェットナイフが遅く見える。


 これがゾーンっていうやつか?




『我は神』




 頭からハッキリと聞こえるこの声、なぜか懐かしくも感じる。




なんじ守護神しゅごしんなり』




 お前は俺を見守っていたんだな。




『汝、生きたいか。ならば望み、つるぎを持て! さすればあらがうことはできよう。だがいくさからまぬがれることはできぬ。さぁ、立ち上がれ武士もののふよ。汝の信じる道を行け!』




 俺は右手に何か重みを感じたので、見てみると六〇センチぐらいのつるぎを持っていた。


 その剣の刃をマチェットナイフの刃に触れ、それを跳ね返す!


 大男は唖然あぜんとしながら、跳ね返された力を使って空中で後方に回転、石畳の上に着地し、俺をまるで最高の獲物を見つけたけもののように笑っていた。

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