問5-2 背後の席(メリット)


 誰にも邪魔されず、疑われず、糾弾されず、堂々と黒板を見るふりをして、好きな女子の後ろ姿を、見つめ続けることができる。


「……生まれてきて良かった」


 と、心から親に感謝できる自分になれるだろう。是非これを機会に、親孝行を存分にして頂きたい。


 ある日突然、好きな女子が「ポニーテール」や「ツインテール」に髪型を変えを露出してきた時、それは何かの合図かもしれない。声にできない大切な想いを、後ろの座席の僕に伝えようとしているのかも知れない。


 ――という、ご都合主義的な、自分勝手な妄想、クズ勘違い野郎的な、解釈だけは厳禁である! そういう人間は、ゲス、愚鈍、阿保、低能者、脳足りん、たわけ、うすのろ、馬鹿野郎、などと称されて足蹴にされるのがオチである。決してあってはならない(自惚れず、謙虚といいう日本人の美徳を持ち合わせよう)。


 そして何よりも重要なは、プリント配布である。プリントが前から後ろへと配られる。その時、前の座席の好きな女子が、振り返り、横顔を見せるその後ろ姿は、まさに見返り美人。

 菱川師宣の浮世絵「見返り美人図」を彷彿させるだろう。そんな情景に見惚れつつも、爽やかな笑顔でプリントを受けとめるのである。


 ――これ以上の美辞麗句は無意味だ。


 では僕の、いや僕たちの高貴な理想が、現実となる可能性を計算してみようではないか。




つづく






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