第9話 声

夏休み初日

から1週間

部活でもあるかのように

家を出る


信号機の色

を落として

通学路は

青葉の香


セミの一生

を背負って

玄関は

青春あおはる


ふいにどれも悲しくて

救いがたい

自分を笑って

台風6号発生


1学期に戻って

あの雨の日に戻って

傘を返したあの瞬間に

戻って


もっと話しておくんだった

後悔の航海

今更いまさらかじは切れない

切ったところで行くあてもない


ここにいるしかない

夏の砂時計の

中で

落ちて落ちて


昨日の雨に

路頭の朝顔

あお色は

落ちて落ちて


8月はどうする

決まってるさ

針路は持たず

腰を落とす


1学期を通り抜けた

玄関前

ストーカーまがいに

気を落とす


「あいたい」

「あえない」

感情の鉛筆は

所構わず羅列する


その時


たった一つの

玄関に入っていく

砂の音はスピードを上げて

この地球の自転を無視する


だけど


ただ求めていた

玄関に消えていく

砂の音はスピードを忘れて

この世のことわりを無視する


心拍を上げて

無視できない瞬間を待つ

絶対に飛び込む

その1歩を生み出す


声の恋

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る