不完全な言葉の世界
senri、
貴方の腕時計
「ねぇ、なんで腕時計を付けないの?」
昔、貴方にそんなことを聞いたことがあった。
「腕時計を付けてると時間に縛られてるみたいで嫌なんだよ。」
貴方はさわやかに笑いながら、少し痛い台詞を返してきた。
でも、私にはそれが何処か魅力的で、そんな貴方のことが好きだった。
そんな貴方と久しぶりに会う。
それが私にとってどれだけ特別なことか、きっと貴方は知らない。
でも、それを教える気は無いし、言ったところで意味が無いだろう。
待ち合わせ場所に指定していた銅像の下に昔と変わらないようで、少し大人びた貴方を見つけた。
手を振りながら近づいて来た貴方の腕には時計が着いていた。
「腕時計、、、」
思わず口から溢れたその言葉を貴方はしっかりと拾い上げて照れくさそうにする。
「あ、これ?彼女が去年の誕生日プレゼントでくれたんだ。」
そう言いながら貴方が見せた笑顔は、色っぽくて、大人っぽさと少しの無邪気さが入り乱れていた。
「そうなんだ。素敵な腕時計だね。」
笑顔を無理矢理作った笑顔と一緒にずっと心の奥に閉まって置いた想いがどこかへ行ってしまった。
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