1分で読める物語
神崎玲央
また会う日まで
春は別れの季節であると同時に出会いの季節でもありますと壇上で語った校長の言葉が頭から離れない。
君との別れで生まれる悲しみはどうしようもないほどの喪失感は君でしか埋めることができないのに。
学校が変わってもどんなに離れてしまっても毎日だって君に会いに行くよと誓ったその言葉に勿論嘘はないのだけれど。
現実がそんなに甘くないことを俺はもう知っている。
俺のことをどうか、どうか忘れないでくれ。思わずぽつりと漏らした声が人気のない校舎に虚しく響く。
そんな俺の言葉に君は優しくその目を細めそっと伸ばした俺の手に白い頬を擦り寄せた。
「…本当、仲が良いですよね」
すっと音もなく現れた後輩が少し呆れたように俺たちに向けて言葉を紡ぐ。
「相思相愛だからな」
なんて言葉を返した俺にはいはいと後輩は投げやりに返事をすると
「もうそろそろ、良いですか?」
鍵かけちゃいますよとちらりその目を時計へと向けた。
名残惜しく思いながらも俺はゆっくりと腰を上げあぁ、そうだなと声に出す。
「それじゃあ、またな」
静かに響いた俺の声に君は応えるようにして元気よくこう言った。
「コケコッコー!!」
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