自己肯定感弱者による就活にまつわる雑文

相内結衣

9月8日

 就活強者の一つの条件に、「自分を実際以上に良く見せることに躊躇いがない=自己肯定感が高い」というのがあると私は思っている。彼らは、5ある自分の良さを、胸を張って10だと言うことができる。

 一方、自己肯定感の低い人間は、まず自分を、良さがせいぜい2か3のダメ人間だと認識している。


 だから、それを10に見せることに心理的な抵抗が強い。「本当はダメ人間なのに申し訳ない」「嘘が喝破されないか不安」といったネガティブな感情が働き、同じ"良さが10ある人間"を演じるのにも、明確なパフォーマンスの差が生じてしまう。


 さらに、元から無理をして、思い描く"真人間像"を演じているため、精神的な負荷が圧倒的に高い。また、自己肯定感の低い人間は、お祈りされると、自分自身が否定されたと受け取ってしまうから、受けるダメージも格段に大きくなる。


 つまり、自己肯定感が低いと、通過率が低いだけでなく、選考を受ける精神的なコストと、落選した際のダメージすら甚大になってしまう。今さら即時に自己肯定感を高めることはできないから、それを踏まえた考え方に変えるしかない。


 私のとっている対処法は、自分のせいではなく他人や社会のせいにすること。自分が真っ当な人間を演じなければいけないのは、企業や今の就活制度がそう求めているから。それが悪いと言うのなら、違う採用方法を考えろ。責任は企業側にある。


 そして、落とされたとしても、悪かったのは自分自身ではなく、自分のパフォーマンスだったと思うこと。改善のために必要な反省だが、これが一番難しい。

 しかし、それでも納得がいかなかったら、それは全て人事が悪い。無能な採用方法をとる無能な企業はこっちだって願い下げだ。今まで散々自分を否定してきたのだから、今さら多少他者を否定してもバチは当たらないだろう。


 もちろん、企業がよく言う"ありのままの自分"を受け入れてもらうに越したことはない。

 私は、20社ほどの面接を経て演じることに辟易し、「自分はだめなところがあるけど良いところが2か3あります」と開き直って面接を受けてきた。結果は芳しくなかったが、自身を偽らなくていいので精神的には楽だった。

 しかし、最近の面接で人事から「人事はマイナスなところの方が覚えてるよ。自分のマーケティングを一から考えた方がいい」と言われ、ため息の出る想いだった。


 今さら自分を演じる就活をしないといけないのか。振り出しに戻った気分だ。だからこうして過去の面接を思い出した。

 特段、思いつめたり、悩みこんでいるわけでもない。ただ、またここに戻って来たのかという諦念があるだけだ。


 一応、内定は保持していて、むしろ私は恵まれた状況にあると言えることも自覚している。当然、私より辛い立場にある就活生もいるだろう。私はこの文で、そういった自己肯定感の低さが原因で悩まれている方たちに寄り添いたかっただけだ。「いらんお世話じゃ、ハゲ」というのなら一蹴してもらって構わない。むろん、私は禿げていないが。


 何か前向きな文で締めたいと思うのだが、それが思いつかないのが嘆かわしい。全ての悩める就活生に幸多からんことを。

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自己肯定感弱者による就活にまつわる雑文 相内結衣 @aiuchiyui

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