chapter 3 -beginning of my story- 04

「走れぇぇぇぇ!」

崖が崩れ始める前に、地表にヒビが入り始めたのを見つけられたのは幸運だった。

俺たちが走り始めたとき、姿を遮っていた大きな岩が、振動で揺れ始めた。

さらに、地割れが大きくなり、崖の一部分が崩れて落ちていく。


これで落ちたら、間違いなくこのキャラクターは助からない。

こんな崖の縁の部分からではいつ滑落するかわからない。

とにかく離れなくては……。


俺たちは足を止めず、山の斜面を駆け上がりながら、山道を走って上る。

幸いなことに、我々の頭上にいるドラゴンは、我々を意に介していない様子だ。

「今のうちに隠れられるような場所を探そう!」


必死で足を動かし、ドラゴンと地割れから逃げる。

こんなに真剣に何かから逃げたことがあっただろうか。

しかし、走りながら周りを見回す余裕が出てこない。


悠が龍を見て叫んだ。

「ゲッ!?またさっきのが来るぞ!!」

ドラゴンが再び口を開けようとしていた。


もう一回はヤバイ!

「ヤバイ!さっきの咆哮で脆くなった崖付近が、崩れて一気に地滑りするぞ!」

「じゃあどうする!?どこか隠れられる場所は……?」

一旦足を止めて、辺りを見回す。


随分と走ってきてしまった。

気づけば、keep outの線とは反対方向に走ってきていた。

景色も違っている。


「「あ。」」


声を合わせて言う。

俺たちが発見したのは、横穴だった。


「洞窟か……?」

「とにかくあの横穴に入ろう。」


洞窟を目指して走る。

「もしアレがドラゴンの住処だったら……?」

「大丈夫。あの巨体だ。あの穴はあのドラゴンには小さすぎる。」


ドラゴンの口が大きく開き、またあの爆音があたりに響く。

「-----------------------------!!」

即座に耳を塞ぐ。

不意に、まともに聞いてしまったら、気を失いそうなほどの大爆音。


耳を塞ぎ、走って洞窟の入口に入る。

悠を見た。

何か口を動かしているが、何を言っているのかはわからない。


とにかく洞窟に入った。

少し、音圧が低くなったような気がする。

しかしその音は、まだ聞こえてくる。


ただ、外に居る時よりはマシだ。

とにかく洞窟の少し奥まで走り、息を整える。

「ハァハァ……、ヤバかったな。何だアレ!?あんなバケモノみたいなのもゲームのモンスターなのか!?」

「ハァハァ……、確かに……。アレと戦うのは、まだまだ先になるだろう。でもドラゴンか…いつか倒せるようになるもんかな。」


流石は龍といったところだ。

その姿を見るだけであらゆる生物は恐れおののき、声を聞けば逃げ出すだろう。

事実、あの咆哮を聞くと、身体が動かなくなりそうだ。

対峙するときを考えると、おっかない。


「とりあえず、ドラゴンをここでやり過ごし、息を整えよう。」

ドラゴンの声が聞こえなくなるまで、暫く休むことにする。


φ


息が整い、呼吸も戻ってきた。


落ち着いて洞窟の中を見回す。

入口の明かりが届いてはいるが、中は薄暗い。

さらに、外よりも肌寒く、すこしジメジメした肌触り。

かび臭いにおいもしていた。


休んでいると、遠くでゴゴゴ…という音が聞こえてくる。

「……山崩れが起こったようだな。」

「……遠くだから大丈夫そうだけど、この洞窟大丈夫かな……。」


山崩れが起きて、洞窟の入口が閉じてしまうのは困る。

しかし、遠くの方で音がしたということは、この辺は大丈夫かもしれない。

「今のところは大丈夫じゃないか?見たところ、びくともしていない感じだし。」


装備オプションからランタンをつける。

これは装備や消費扱いではなく、常備しているものだ。

洞窟の内部をよく見ると、壁は土壁というより、岩のような堅い質感だった。

「ほら、こんなに頑丈そうだぜ。」

「確かに、ちょっと安心。」


奥を見る。

結構、奥まで続いているように見える。

ランタンの光が最奥を照らせないほどだった。


「結構広いな。奥が見えない。」

暗闇に向かって歩み始めた。

「おいおい、どこに行くんだよ。」

悠がランタンに火をつけながら言う。


「え?いや入口からは出られないし、とりあえず進んでみようかと……。」

歩みを進めていく。

「おいおい、待てって。」

と慌ててついてきた。


ランタンの光は少し心もとないが、洞窟の暗闇の中では頼りになった。

炎が揺らめき、ぼんやりと薄明りが俺たちの影を大きく伸ばす。


入ってきたところの付近には、ドラゴンが居る。

どちらにせよこの暗い洞窟の中にいなければならないなら、この洞窟の中を少し探検してみようじゃないか。

そう思い歩き始めたのだが、悠のある気づきに、それが目的に変わった。


「そういえば、クエストペーパーを見てなかったよね。」

クエストペーパーには簡単な地図がついており、自分の位置とクエストで指定された地点の場所が示されていた。

ここがどのへんなのかは、地図でわかるはずだ。


立ち止まってランタンで照らす。

「あれ?この近くみたいだね。」

地図で確認すると、最終地点はこの近くのようだった。

「お、ラッキーだな。……ってあれ?この達成状況のところにある『発見』て何だ?」


クエストペーパーにはクエスト概要、達成状況、簡易ナビゲートなどが描かれている。

その達成状況の中には、


☑ 第一地点に到達せよ

☑ 第二地点に到達せよ

☐ 第三地点に到達せよ

☑ 発見!(至急報告せよ!)


と記されていた。


「もしかして、ドラゴン?報告って、何を報告するんだろうね……。戻ったら聞いてみようか。」

クエストペーパーをしまい、またランタンで洞窟を照らす。

「もしかしたら、何か追加報酬があるのかもな……。」

突然、クリアマークが増えたのは良い演出だな。


話をしながら奥へ進んでいくと、何かが見え始めた。

「あ、ついに洞窟の終端かな……?」

「何か見えたな。とりあえず、最奥まで行ってみようぜ。」


大抵、こういうゲームの洞窟には何かあるんだよな。

鉱石や水系のレアな素材か?

俺は宝箱を期待しているんだがな。


すると白い壁が見え始めた。

白いレンガを積み重ねたような壁である。

「こんな洞窟に壁とは……。」


壁だけではない。

注意して見ると、石の柱のようなものも立っている。

奥は壁だけではなく、地面にも石床が敷き詰められていた。


「おぉ!?」

あの祠だ!

思わず声を上げてしまった。

まさか、逃げ込んだ洞窟が終点だったとは。


「ここが最終地点だったのか。」

「こんなところ、普通にプレイしてたらわからないよ。入口から石床ならわかりやすいのにね。」

相当探さないと、この洞窟は見つけられないだろうな。


ということは。

アイテムボックスから指輪を取り出す。

ランタンの光とは比較にならないほどの光で、一瞬目が眩む。


「さぁ、クエストクリアだ。」

祠の台座に、指輪をはめ込む。

「よし、じゃあ入口に戻って……」

悠が言いかけたとき、奥の壁がガラガラと音を立てた。


「!?何がおきたの?」

「この洞窟もヤバイか?」

崩落を予感したが、天井から砂も落ちてこない。

さっき聞こえた土が崩れる音とも違うようだ。


洞窟の内部から響くような音。

何かが動く音がする。

周りを見回す。

「おい、奥の壁が下がっていくぞ。」


指輪の光も弱まらない。

どうやら、ここがこのキーアイテムの使いどころだったようだ。

しかし、すごい仕掛けだ。


奥の白い壁が砂埃を上げながら下がっていく。

台座の指輪が放つ光が砂埃に遮られ、奥が見えなくなる。


「ゲホッゲホ……、何があるんだ?」

「……やっぱり宝箱とか?」


砂埃の合間から、指輪の光に呼応するものがあった。


砂埃が晴れはじめ、見えたもの。

それは台座に刺さった宝剣だった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

名前  :ノビー(昇)

Lv   :10

職業  :戦士

装備  :鉄の帽子

     ガントレット

     鉄の鎧

     鉄の剣

     鉄の盾

スキル :薙ぎ払い

     ソードステップ

     受け流し

     ボルテージ

     インサイト

     サポートダッシュ

     サポートキャリー

     バルクアップ

アイテム:???の指輪(未鑑定)

     スタートポーション×29

     短刀

     ブーメラン

     緑の雫×24

     コボルトの毛×15

     コボルトの小盾

     コボルトの剣×2

     コボルトの槍

     コボルトの弓

所持金 :120G

――――――――――――――――――――――――――――

名前  :ゆうゆう(悠)

Lv   :11

職業  :魔法使い

装備  :とんがり帽(魔女)

     布のローブ

     木の杖

     火の書01

     氷の書01

     癒しの書01

スキル :ファイア

     チリング

     ヒール

     テレポーテーション

アイテム:スタートポーション×27

     マジックポーション×5

     緑の雫×26

     コボルトの毛×10

     コボルトの槍

     コボルトの小盾

     コボルトの弓×2

所持金 :110G

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