chapter 2 -road to quest- 04

コボルトの本隊との闘いは、案外苦戦しなかった。

武器を扱う敵との戦闘経験がレッサーコボルトとの闘いだけだったことが懸念されたが、『ボルテージ』のスキルがこの不安を解消してくれた。


剣を持つコボルトはこちらの振る剣に対して、盾を使って防ごうとした。

こちらも相手が剣を振れないように、コボルトの剣に盾を向けて近づける。

盾と剣が触れ合ったその時、コボルトの様子がおかしくなる。

ダメージを受けたような素振りを見せ、後ろに退く。

コボルトはその後、麻痺状態となって数秒動けなくなった。

『ボルテージ』は、単純な筋力の増強だけではなく、属性攻撃のスキルだったようだ。

数秒の間、攻撃力をアップさせるスキルだと思っていたが、軽く電気を纏うことで、筋力や属性付与を発生させ、攻撃力を底上げしているようだった。

「このスキルも汎用性が高いな。攻防一体って感じだ。」

しかし、麻痺させるほどの電気ダメージを与えられるわけではないらしい。

「ランダムでも汎用性高いよね、麻痺系の攻撃は。」

悠の冷気攻撃も麻痺効果を与える系統だ。

連携できれば、麻痺効果を付与させる可能性も高まる。

しかし、悠が続ける。

「両方同時に仕掛けられればいいけど、こっちは思ったより燃費が悪いみたいね。」

「燃費?」

「さっきも言ったけど、MPの継続消費はしょうがないとしても、消費量は大きいよ。もっと効率的に使いたいかな、的に囲まれた時とかね。」

魔法は便利な反面、そういう制限もあるんだな。

「戦士はスキルが使い放題なのか?あんまりスキルのゲージが減ってる感じはないぞ。」

戦士にもスキルゲージがあり、スキルを使用すれば減っているが、直ぐに回復している。

「消費量と獲得量のバランスがいいんだろうね。近接攻撃でゲージが溜まるんじゃない?」

「魔法使いは違うのか?」

「杖で殴ればゲージが溜まるかもね。」

「殴り魔法使いか…。魔力を溜まるようなチャージスキルが習得できればいいんだけどな。」

「まだ先のことになりそうなんだよね。スキルツリーをみると。」

序盤ではチャージを必要とする魔法はほぼ無いってことだろうな。


しばらく草原で狩りを続けていたが、この辺りではグリーンスライムとコボルトの二種のモンスターとしか出会わなかった。

コボルトたちが持つ武器は、ギルドで手に入れられる武器より粗悪なものだったが、拾うと使うこともできるようだった。

そこで、剣以外の武器も使って戦っていた。

ソードステップ以外のスキルは、剣以外の装備でも使用できるらしかった。

そして…

「やっとクエスト素材もコンプリートだね。」

30分ほど狩り場で戦っていたら、クエストペーパーが光り出し、クエスト終了を告げる。

「案外、難しくなかったように感じたが…。」

「いや、これだけ集まったけどね。」

悠が素材をアイテムボックスから取り出す。

確かにすごい量だった。

「スポーン量も多かったな。ウェーブっていうのかな、波次第だったけど。」

湧くときは湧くが、少しその流れがなくなる時があった。

しばらく狩りを続けていたが、レベルも上がっているようだった。


「経験値も上々だ。さ、偵察の方も済ませよう。」

悠が言った。

「こっちのクエストが本命なわけだし。」

本命のクエスト。

悠が受けた三つの依頼の最後の一つは、偵察クエストだ。

指定された地点へ行き、指定された機器を使ってキャプチャを行う。

これだけの簡単クエストだ。

なぜこちらが本命なのかというと、

「ほぅ、じゃあこれが例の現金クエストか?」

そう。

このゲーム、アルカディアが人気なもう一つの理由は、公式RMTである。

クエストペーパーの色には違いがある。

通常の依頼には羊皮紙特有の紅茶が滲んだような色。

緊急の依頼は赤色。

そして、換金可能なポイントであるAPが手に入るクエストは紫色のペーパーで掲示される。

この紫色のクエストの中では特殊なポイントが入手でき、現実世界の貨幣に交換が可能である。

勿論、現実の貨幣に交換しなくても、ゲーム内で協力なアイテムや装備と交換することもできる。

所謂、課金ポイントというやつである。

「あれだけプレイヤーが居て、よく受注できたな。」

RMT対応のクエストがあるということは、当然ポイント目当てのプレイヤーは多いはずである。

公式に多くのクエストを発注しているとしても、そういう募集は瞬時に定員に達してしまうものだ。

オンラインゲームのクエストやパーティ募集も、効率の良いクエストやパーティの募集なんかはすぐに終わってしまう。

「このゲームのクエストボードは、あのギルドハウス前にある掲示板から紙を取る形で受注するし、ほかのゲームみたいに条件を指定して検索みたいなことができないからじゃないかな。」

リアルすぎるゲームにも考え物だな。

「それくらいのインターフェイスがあってもいいじゃないか?」

「リアル思考のゲームでそれは嫌だな。」

「受注できたから良いけどさ。結構あったのか?」

「うん。掲示板にあるクエストは、たくさんあったけど紫色の紙は割とあった。」

何か制限があるんだろうか。

「紫のクエストは同時に一つしか受注できないらしいよ。」

そういうことか。

RMT可能なクエストがそう簡単にこなせるようではダメだな。

「偵察クエストは紫のクエストの中でも簡単そうだが…。」

「他にもあるけど、一番高いのは採取クエストらしい。」

採取クエストは難しいさぞかし難しい素材を要求されるんだろうな。

紫のクエストには採取、偵察、撃退、警備のクエストがあり、それぞれのクエストには難易度やランクがあるらしい。


「偵察クエストは…この先らしいけど…。」

クエストペーパーを見ながら悠が方向を確認する。

この先って…。

広大な草原に背を向け、けものみちが続く林道の先には小高い丘が見えた。

分かれ道の分岐点に『禁止エリア』と書かれた看板が立っていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

名前  :ノビー(昇)

Lv   :8

職業  :戦士

装備  :鉄の帽子

     ガントレット

     鉄の鎧

     鉄の剣

     鉄の盾

スキル :薙ぎ払い

     ソードステップ

     受け流し

     ボルテージ

     インサイト

アイテム:???の指輪(未鑑定)

     スタートポーション×29

     短刀

     ブーメラン

     緑の雫×16

     コボルトの毛×8

     コボルトの小盾

     コボルトの剣

所持金 :120G

――――――――――――――――――――――――――――

名前  :ゆうゆう(悠)

Lv   :9

職業  :魔法使い

装備  :とんがり帽(魔女)

     布のローブ

     木の杖

     火の書01

     氷の書01

     癒しの書01

スキル :ファイア

     チリング

     ヒール

アイテム:スタートポーション×27

     マジックポーション×5

     緑の雫×18

     コボルトの毛×6

     コボルトの槍

     コボルトの弓

所持金 :110G

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