第11話 悪夢の悪夢
「なに!? 信じられん!? 私の悪夢から抜け出せたというのか!?」
望が悪夢から脱出したことに黒い男は驚く。
「確かに俺も悪夢に飲み込まれた時は助からないと諦めそうになった。だが、俺の夢には続きがあってな。」
望は悪夢の続きを思い出す。
「望。望って、俺が両親を失って一人で暗闇を彷徨っている時に、俺のじいちゃんとばあちゃんは、俺のことを優しく愛情を持って育ててくれたんだ。」
望は、両親の死で失ったかにみえた家族愛を、祖父祖母のおかげで家族愛を取り戻したのだった。
「私、望と結婚してあげる。」
小さなお隣の女の子がプロポーズしている。
「よろしくお願いします。希ちゃん。」
女の子は小さい頃の希だった。
「わ~い! 夫婦! 夫婦! 望、おままごとしよう。」
「おお!」
こうして望は子供の頃から、一人ぼっちや孤独、寂しいという感情とは無縁で、たくさんの人達の優しさに包まれながら、真っ直ぐな性格に育ったのだった。
「俺は一人じゃない! じいちゃん、ばあちゃん、希、美杉。俺には、俺が悪夢に飲み込まれても救ってくれる家族がいるんだー!!!」
「か、か、家族だと!? そんなものに私の悪夢が破られるなんて!? あり得ない!? あり得ないのだ!?」
家族という言葉に異常に動揺する黒い男。
「今度はこっちの番だぜ! おまえの夢も覗いてやろう! くらえ! 夢魔法! dream come true!」
望は、必殺の魔法を黒い男に打ち込むのだった。
「ここはどこだ!? まさか悪夢を司る私が、夢の中に追いやられたというのか!?」
黒い男は自分の夢の世界にいた。
「お父さん!? お母さん!? うえええ~ん!」
泣いている男の子と悪そうな叔母さんがいる。
「あれは俺? そうだ!? この場所は見覚えがある!?」
「クロム、おまえの両親はいないんだよ。おまえを捨ててどこかへ行ってしまったんだ。」
なんと黒い男は捨て子だった。
「今日からおまえは、この孤児院で生きていくんだよ。私を恨むんじゃないよ。」
「これがこの男の子の代金です。」
「じゃあね、さようなら。キャッハッハー!」
叔母さんは黒い男の子を孤児院に売り飛ばすとお金を貰って笑って去って行った。
「うえええ~ん!。」
黒い男の子は、ただただ泣くしかできなかった。
「お~い! みんな! 新入りだ! 可愛がっておあげ!」
「はい!」
この後、黒い男の子クロムは、地獄の日々を孤児院で過ごすのだった。
「ギャアアアアー!」
こうして悪夢の魔法使い、黒夢クロムは生まれてきたのだった。
つづく。
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