第10話 悪夢はいかが?

「黒の魔法使い!?」

 望は、相手が何者であろうと許せなかった。

「おまえたちが人間を化け物に変えたのか!? 人から夢や希望を奪ったというのか!?」

「私じゃありません。」

 黒い女の子は、即座に否定する。

「私だ。私が人間の夢と希望を失わせ、さまよえる渋谷人レベル1に変えてやったのだ! どうだ! すごいだろう! ワッハッハー!」

 黒い男の方が自慢げに高笑いする。

「許せない! 人の夢や希望を奪うなんて! 絶対に許さないぞ!」

 望の怒りが爆発する。

「ほ~う、感情の高鳴りと共に魔法力が上昇している。だが、そんな統制の取れていない荒ぶる魔法力では、私は倒せんぞ!」

「やってみないと分かるものか!? くらえー! ドリーム・カム・トゥルー!」

 望は、さまよえる渋谷人レベル1を人間に戻した必殺技を黒い男にぶち込む。

「効かんな。これしきの魔法は。」

 望の必殺技は簡単にかき消される。

「魔法というのは、こういうものをいうのだ! おまえも夢と希望を失い、さまよえる現代人になるがいい! 悪夢魔法! バッド・ドリーム!」

 黒い男が魔法を望に目掛けて放つ。

「うわあー!?」

 望は、悪夢にうなされてしまう。

「望!?」

「お兄ちゃん!?」

 希と美杉は望を心配する。


「ここはどこだ!? 俺は謎の男の魔法にかかってしまったはず!?」

 望は、悪夢の中を彷徨っていた。

「うえええ~ん! お父さん!? お母さん!? どうして死んじゃったの!?」

 泣いている子供の声が聞こえた。

「あれは、子供の頃の俺?」

 幼い頃の自分の姿を見る夢の中にいた。

「そうだ! 俺は子供の頃に父さんと母さんを事故で亡くして、親の愛を知らない子供になってしまったんだ!? うわあー!? 嫌だ!? 一人は嫌だ!? 寂しいよ!? 孤独は嫌だ!? 一人ぼっちは嫌だ!?」

 望は、黒い男の放った悪夢を見せられてもがき苦しむ。


「うわあー!? 助けて!? い、嫌だ!?」

 望は、悪夢を見ながらうなされていた。

「どうしたのよ!? 望!? しっかりしなさいよ!?」

 心配する希。

「あの黒い男が悪夢を望お兄ちゃんに見せているんです!?」

 美杉と希は、黒い男を見る。

「悪いが私を倒しても、その成り立て魔法使いは助からないぞ。自力で私の悪夢を打ち破ることができなければな。ワッハッハー!」

 黒い男は、望には絶対に自分の悪夢は打ち破れないという自信があった。

「それはどうかな?」

 その時、望の声がする。

「なに!?」

 その声に黒い男はビックリする。

「おまえの悪夢は俺には効かなかったようだぜ!」

 望の意識が回復する。

 つづく。

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