第8話 あなたの夢を叶えましょう

「キャアー!? 助けて! 望!」

「ガオー!」

 いつものように渋谷の街で、希がさまよえる渋谷人レベル1に襲われる。

「やめろう!」

 颯爽と魔法使い衣装の望と美杉が、美杉の魔法のほうきに二人乗りして現れる。まだ望は自分の魔法のほうきには乗ることができないの。

「大丈夫か? 希。」

「ええ。望が来てくれると思っていたわ。」

 望と希は、お互いに信じあい、心と心で通じ合っている。

「うわあー!? 二人だけの世界だ!?」

 頭脳は小学生の美杉には、大人の世界は早いのだ。

「よし、あいつの相手は俺に任せろ。俺の魔法で倒して見せる。」

 望は、さまよえる渋谷人レベル1と対峙する。

「望、気をつけて。」

「お兄ちゃん、遂に魔法を使うんですね。」

 希と美杉は、望のことを心配する。

「あなたの夢を叶えましょう。」

 望は、さまよえる渋谷人レベル1に声をかける。その表情は、自分が魔法を使うことができるのかという疑問と不安が混じって、少し引きつっている。

「ガオー!」

 さまよえる渋谷人レベル1が望に襲い掛かる。

「おまえが人間の夢と希望を無くした姿というのなら、俺が、俺の魔法で、おまえの夢と希望を、人の心を取り戻して見せる!」

 これが望の魔法の詠唱である。

「Make your dream come true.」

 この世界は英語が魔法だった。望は、さまよえる渋谷人レベル1の精神世界を垣間見る。


「今日は渋谷に遊びに来たぞ! 無事に大学も卒業だ! 春から社会人だ! やったー!」

 これがさまよえる渋谷人レベル1の男が人間だったころの記憶である。

「至って普通の男の子ですね。」

「そうだな。でも、何かがあったんだ。この楽しそうな男が夢と希望を無くす出来事が。」

 望と美杉は、魔法使いなのでさまよえる渋谷人レベル1の精神世界の中を覗き見できる。

「本当ね。そこら辺のチャラ男やパーティーピーポーと一緒ね。」

 なぜか希もさまよえる渋谷人レベル1の精神世界を見ることができた。

「ルルルルル!」

 その時、男の子の携帯電話が鳴った。

「はい、もしも?」

「残念ですが、あなたは大学を留年することになりました。就職も諦めてください。」

 ガチャーン。言うだけ言うと電話は切れた。

「可哀そうに。辛すぎるぜ。生きていけないな。」

「大学留年だって。もっと真面目に勉強してれば良かったのに。」

「就職もパア。そりゃあ、夢も希望も無くしてしまうわ。」

 望たちは、男のことを哀れんだ。

「ギャアアアアー!?」

 突然、男が苦しみだし、体が灰色に飲み込まれていく。

 つづく。

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