第4話 俺、今日から魔法使いになる

「現代人は、文字だけのやり取りをする者を友達といい、本当は一人ぼっち。」

 渋谷神は、現代人の無機質な人間関係を嘆く。

「そう言われてみれば、学校の休憩時間は、みんなスマホばかりいじって、誰とも話をしていないような。」

 望は、自分の休憩時間の教室を思い出す。休憩時間に大声を出して教室を走り回っているのは、望と希の二人だけである。

「人と人とのコミュニケーションが無くなり、スマホばかり見て、スマホに生命エネルギーを吸い取られ、人の心を無くして、喜ぶも悲しみも、愛すら知らずに、夢も希望も無くして、人間が化け物に変わっているのです。」

 渋谷神は、話が終わると地上を指さす。 

「あんな風にね。」

 人間界では、スマホに魂を奪われた人間が、さまよえる渋谷人レベル1に変化していく。そして、他の人間たちに襲い掛かるのだった。

「希!?」

 その中に、希がいた。望も事件に巻き込まれていた。

「あの黒い人型の影はなんだ!?」

「あれはスマホに生命エネルギーを奪われてしまった人間の生れの果てです。」

「あの化け物が、人間だというのか!?」

「そうです。」

 黒い人型の影、さまよえる渋谷人レベル1は、元々は人間だった。

「望、このままでは人間はスマホに支配されてしまいます。どうか人間をスマホから救ってください。」

 渋谷神の願いは、人間をスマホの魔の手から救うことだった。

「神様! 希を助けてください! 希を助けるためなら、俺、何でもやります! 何か希を助ける方法はないんですか!?」

「ありますよ。あなた、魔法使いやりませんか?」

「ま、魔法使い!?」

「そうです。魔法使いです。あなた、何でもやるって言いましたよね。」

「で、でも!? 俺、魔法なんか使えませんよ!?」

「いいえ、あなたは既に魔法を使っています。」

「ええ!?」

「ファイアも魔法、サンダーも魔法です。」

「いえいえ!? それはゲームの話でしょう!?」

「知らなかったんですか? 英語は魔法の呪文なんですよ。」

「なんですと!?」

 望は、神様に言われるまで、英語が魔法だったなんて、考えたこともなかった。

「む、無理です!? 俺、英語は苦手だし!?」

 望の成績は決して良くはない。

「大丈夫ですよ。神である私がサポートします。衣装もサービスしてあげましょう。チェンジ・オブ・クローズ。えい!」

 望の服装が、魔法使いの制服の様な服に変わる。

「おお!? まるで魔法使いっぽく見える!?」

 望は、自分の衣装が魔法使いの正装のようになったので驚いている。

「人間をスマホから救いに行ってらっしゃいませ。瞬間移動魔法、テレポーテーション。」

 神様は、魔法を唱えた。

「そんなアホな!? うわあー!?」

 望の姿は天界から消えた。

 つづく。

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